顔氏家訓 / 治家
南陽有人、爲生奧博、性殊儉吝、冬至後女壻謁之、乃設一銅甌酒、數臠麞肉、壻恨其單率、一舉盡之。主人愕然、俛仰命益、如此者再、退而責其女曰:「某郎好酒、故汝常貧。」及其死後、諸子争財、兄遂殺弟。
新字:南陽有人、為生奥博、性殊倹吝、冬至後女壻謁之、乃設一銅甌酒、数臠麞肉、壻恨其単率、一舉尽之。主人愕然、俛仰命益、如此者再、退而責其女曰:「某郎好酒、故汝常貧。」及其死後、諸子争財、兄遂殺弟。
書き下し
南陽に人有り、生を為すこと奥博なるも、性殊に倹吝なり。冬至の後、女壻之に謁す。乃ち一銅甌の酒、数臠の麞肉を設く。壻其の単率を恨み、一挙にして之を尽くす。主人愕然として、俛仰して益すを命ず。此くの如き者再びす。退きて其の女を責めて曰く、「某郎は酒を好む、故に汝常に貧し」と。其の死する後に及び、諸子財を争い、兄遂に弟を殺せり。
現代語訳
南陽にある人がいて、暮らし向きは豊かで奥深かったが、性格はことのほか倹しくけちであった。冬至の後、娘婿が挨拶に来た。そこで銅の椀に一杯の酒と、数切れの鹿肉を出した。婿はその粗末さを不満に思い、ひと息に飲み干した。主人は驚いて、うつむき仰いでから、追加を命じた。同じことがもう一度あった。後になって娘を責めて言った。「あの婿殿は酒好きだ。だからお前はいつも貧乏なのだ」。その人が死んだ後、子どもたちは財産を争い、兄がついに弟を殺した。
解説
けちの行き着く先を、二段構えで描いています。前半は滑稽な場面です。娘婿に椀一杯の酒しか出さず、飲み干されて追加を命じ、後で娘を責める。「あの婿は酒好きだから、お前はいつも貧乏なのだ」——自分の吝嗇を棚に上げ、原因を相手に付け替えています。後半は笑えません。死後、子らが財産を争い、兄が弟を殺した。生前に分け与えることを知らなかった家では、死後に奪い合いが起きる。豊かでありながら分けなかったことが、家を滅ぼしました。財産を残すことと、分け方を教えることは別です。
この章句が説くこと
倹吝某郎は酒を好む諸子財を争う分け方を教える
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