顔氏家訓 / 歸心
世有癡人、不識仁義、不知富貴並由天命。為子娶婦、恨其生資不足、倚作舅姑之尊、蛇虺其性、毒口加誣、不識忌諱、罵辱婦之父母、卻成教婦不孝己身、不顧他恨。但憐己之子女、不愛己之兒婦。如此之人、陰紀其過、鬼奪其算。慎不可與為鄰、何況交結乎?避之哉!
新字:世有痴人、不識仁義、不知富貴並由天命。為子娶婦、恨其生資不足、倚作舅姑之尊、蛇虺其性、毒口加誣、不識忌諱、罵辱婦之父母、却成教婦不孝己身、不顧他恨。但憐己之子女、不愛己之児婦。如此之人、陰紀其過、鬼奪其算。慎不可与為鄰、何況交結乎?避之哉!
書き下し
世に癡人有り、仁義を識らず、富貴の並びに天命に由るを知らず。子の為に婦を娶るに、其の生資の足らざるを恨む。舅姑の尊を倚作し、蛇虺のごとき其の性、毒口もて誣を加え、忌諱を識らず、婦の父母を罵辱す。却って婦をして己身に孝ならざるを教え成し、他の恨みを顧みず。但だ己の子女を憐れみて、己の児婦を愛せず。此くの如きの人は、陰かに其の過ちを紀し、鬼其の算を奪う。慎みて与に隣を為すべからず。何ぞ況んや交結せんや。之を避けよ。
現代語訳
世には愚かな人がいて、仁義を知らず、富貴がどちらも天命によることを分かっていない。子のために嫁を迎えると、その持参の資産が足りないことを恨む。舅姑という上位の立場を笠に着て、蛇のような性根で、毒のある口で言いがかりをつけ、忌み憚ることも知らず、嫁の父母を罵り辱める。かえって嫁に自分への孝行をしないことを教え込み、相手の怨みを顧みない。ただ自分の子や娘を憐れむだけで、自分の嫁を愛さない。こういう人は、ひそかにその過ちが記録され、鬼神がその寿命を奪う。用心して隣人になってはならない。まして交際などなおさらである。避けるべきである。
解説
この章句が説くこと
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『近思録』巻2 為学若し往来憧憧然として、其の私心を用ひて以て物に感ずれば、則ち思ひの及ぶ所の者は、能く感じて動く有るも、及ばざる所の者は感ずること能はざるなり。係る有るの私心を以て、既に一隅一事に主たれば、豈に能く廓然として通ぜざる所無からんや。君子の艱阻に遇ふや、必ず自ら身を省みて、失有りて之を致すかと。未だ善ならざる所有れば則ち之を改む。心に歉(あきた)らざる無ければ則ち勉めを加ふ。乃ち自ら其の徳を修むるなり。明に非ざれば則ち動くも之く所無く、動に非ざれば則ち明も用ふる所無し。習は、重ねて習ふなり。時に復た思ひ繹ねて、中に浹洽すれば、則ち説ぶなり。善を以て人に及ぼして信従する者衆し、故に楽しむべきなり。人に及ぼすことを楽しむと雖も、是とせられずして悶ゆる無きは、乃ち所謂君子なり。
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