顔氏家訓 / 治家
生民之本、要當稼穡而食、桑麻以衣。蔬果之畜、園場之所產、雞豚之善、塒圈之所生。爰及棟宇器械、樵蘇脂燭、莫非種殖之物也。至能守其業者、閉門而爲生之具以足、但家無鹽井耳。今北土風俗、率能躬儉節用、以贍衣食、江南奢侈、多不逮焉。
新字:生民之本、要当稼穡而食、桑麻以衣。蔬果之畜、園場之所産、鶏豚之善、塒圏之所生。爰及棟宇器械、樵蘇脂燭、莫非種殖之物也。至能守其業者、閉門而為生之具以足、但家無塩井耳。今北土風俗、率能躬倹節用、以贍衣食、江南奢侈、多不逮焉。
書き下し
生民の本は、要ず当に稼穡して食い、桑麻して以て衣るべし。蔬果の畜え、園場の産する所、鶏豚の善、塒圏の生ずる所。爰に棟宇器械、樵蘇脂燭に及ぶまで、種殖の物に非ざるは莫し。能く其の業を守る者に至りては、門を閉じて生を為すの具足る。但だ家に塩井無きのみ。今北土の風俗は、率ね能く躬ら倹にして用を節し、以て衣食に贍る。江南は奢侈にして、多くは逮ばざるなり。
現代語訳
人が生きる根本は、必ず作物を作って食べ、桑と麻を育てて着ることにある。野菜と果物の蓄え、菜園の産物、鶏や豚の恵み、鳥小屋と家畜小屋から生まれるもの。さらには家の建材や道具、薪や灯りの油に至るまで、育てて得られない物はない。よくその生業を守る者にあっては、門を閉ざしていても暮らしの道具はすべて足りている。ただ家に塩の井戸がないだけである。今の北方の風俗は、おおむね自ら倹約して使う量を節し、衣食を賄えている。江南は贅沢で、多くはそこに及ばない。
解説
自給の設計についての一段です。顔之推が数え上げるのは食べ物だけではありません。建材、道具、薪、灯油まで含めて、育てて得られない物はないと言い切る。そのうえで「門を閉じて生を為すの具足る、但だ家に塩井無きのみ」——外に頼るのは塩だけだ、という到達点を示します。ここには、外部に依存する項目を数えられるようにしておけ、という発想があります。塩は外から買うと分かっていれば、それは弱点ではなく管理項目になる。事業でも、何を内製し何を外に頼るかが曖昧なまま外注が増えると、いざというとき何が止まるか分からなくなります。頼っているものを一つずつ名指しできるかどうかです。
この章句が説くこと
門を閉じて生を為すの具足る家に塩井無し稼穡桑麻内製と外注
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