顔氏家訓 / 養生
若其愛養神明、調護氣息、慎節起臥、均適寒暄、禁忌食飲、將餌藥物、遂其所稟、不為夭折者、吾無間然。諸藥餌法、不廢世務也。庾肩吾常服槐實、年七十餘、目看細字、鬚髮猶黑。鄴中朝士、有單服杏仁、枸杞、黃精、朮、車前得益者甚多、不能一一說爾。
新字:若其愛養神明、調護気息、慎節起臥、均適寒暄、禁忌食飲、将餌薬物、遂其所稟、不為夭折者、吾無間然。諸薬餌法、不廃世務也。庾肩吾常服槐実、年七十余、目看細字、鬚髪猶黒。鄴中朝士、有単服杏仁、枸杞、黄精、朮、車前得益者甚多、不能一一説爾。
書き下し
若し其れ神明を愛養し、気息を調護し、起臥を慎節し、寒暄を均適し、食飲を禁忌し、薬物を将餌し、其の稟くる所を遂げて、夭折を為さざる者は、吾は間然する無し。諸の薬餌の法は、世務を廃せざるなり。庾肩吾は常に槐実を服し、年七十余にして、目は細字を看、鬚髪猶お黒し。鄴中の朝士に、単に杏仁・枸杞・黄精・朮・車前を服して益を得る者甚だ多し。一一説く能わざるのみ。
現代語訳
もし精神を愛しみ養い、呼吸を整え守り、起き伏しに節度を持ち、寒暖を適度に保ち、飲食に慎むべきものを避け、薬を用い、生まれ持った寿命を全うして、若死にしないというのであれば、私は何も言うことはない。さまざまな薬の用い方は、世の務めを妨げるものではない。庾肩吾はいつも槐の実を服用し、七十余歳で細かい字が見え、髭も髪もなお黒かった。鄴の朝廷の士には、杏仁・枸杞・黄精・朮・車前を単独で服用して効果を得た者がたいそう多い。一つひとつ挙げることはできない。
解説
前段で不老長生を退けた顔之推が、その代わりに認めるものを列挙します。精神を養う、呼吸を整える、起き伏しに節度を持つ、寒暖を適度にする、飲食を慎む、薬を用いる。どれも日常の中でできることばかりです。判定基準が明確で「諸の薬餌の法は、世務を廃せざるなり」——仕事を妨げないなら構わない。仙術を退けた理由が、山にこもって仕事を捨てることだったので、基準が一貫しています。健康法や自己管理の手法を選ぶとき、この基準は使えます。日常の務めを削らずに続けられるか。続けるために生活を明け渡すものは、たいてい続きません。
この章句が説くこと
神明を愛養し気息を調護す世務を廃せず庾肩吾槐実を服す続く習慣養生節度
関連する章句
-
説苑・說叢聖人の衣や體に便にして以て身を安んじ、其の食や腹に安んず。衣を適し食を節し、口目に聽かず。
-
説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
-
葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
-
尚書・說命中寵を啓きて侮りを納るる無かれ、過ちを恥じて非を作す無かれ。
-
葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
-
論語・述而篇子は釣りして綱せず、弋して宿を射ず。