顔氏家訓 / 後娶
思魯等從舅殷外臣、博達之士也。有子基、諶、皆已成立、而再娶王氏。基每拜見後母、感慕嗚咽、不能自持、家人莫忍仰視。王亦悽愴、不知所容、旬月求退、便以禮遣、此亦悔事也。
新字:思魯等従舅殷外臣、博達之士也。有子基、諶、皆已成立、而再娶王氏。基毎拝見後母、感慕嗚咽、不能自持、家人莫忍仰視。王亦悽愴、不知所容、旬月求退、便以礼遣、此亦悔事也。
書き下し
思魯等の従舅殷外臣は、博達の士なり。子の基・諶有り、皆な已に成立す。而るに再び王氏を娶る。基毎に後母を拝見するに、感慕嗚咽して、自ら持する能わず。家人仰ぎ視るに忍ぶ莫し。王も亦た悽愴として、容るる所を知らず。旬月にして退かんことを求む。便ち礼を以て遣る。此れも亦た悔ゆべき事なり。
現代語訳
思魯たちの母方の従兄弟にあたる殷外臣は、広く物事に通じた人であった。基と諶という子がおり、二人ともすでに一人前になっていた。それなのに王氏の女を後妻に迎えた。基は継母に挨拶するたびに、亡き母を慕う思いがこみ上げてむせび泣き、自分を抑えられなかった。家の者も見ていられなかった。王氏のほうも痛ましく思い、身の置きどころがなかった。ひと月ほどで自ら去りたいと申し出て、そのまま礼を尽くして送り返した。これもまた悔やまれることであった。
解説
誰も悪くない失敗の記録です。父は博識な人物、継母も情のある人、子も孝心が深い。それでも成り立たなかった。子はすでに成人しており、亡き母の記憶がはっきりある。そこへ後妻を迎えれば、双方が耐えられない場面が毎日生まれます。ひと月で終わったのは、双方が誠実だったからこそでもあります。顔之推はこれを「悔ゆべき事」と短く記しました。悪人がいなくても、構成そのものが無理なら壊れる——この認識が後娶篇全体を貫いています。人を組み合わせるとき、それぞれが良い人であることは、うまくいく保証になりません。誰にとっても毎日つらい場面が生まれる構成になっていないかを、先に確かめることです。
この章句が説くこと
殷外臣感慕嗚咽旬月にして退く構成の無理
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