顔氏家訓 / 後娶
江左不諱庶孽、喪室之後、多以妾媵終家事、疥癬蚊䖟、或未能免、限以大分、故稀鬬鬩之恥。河北鄙於側出、不預人流、是以必須重娶、至於三四、母年有少於子者。後母之弟、與前婦之兄、衣服飲食、爰及婚宦、至於士庶貴賤之隔、俗以爲常。
新字:江左不諱庶孽、喪室之後、多以妾媵終家事、疥癬蚊䖟、或未能免、限以大分、故稀鬬鬩之恥。河北鄙於側出、不預人流、是以必須重娶、至於三四、母年有少於子者。後母之弟、与前婦之兄、衣服飲食、爰及婚宦、至於士庶貴賤之隔、俗以為常。
書き下し
江左は庶孽を諱まず。室を喪うの後、多くは妾媵を以て家事を終う。疥癬蚊虻、或いは未だ免るる能わざるも、大分を以て限る。故に闘鬩の恥稀なり。河北は側出を鄙しみ、人流に予らしめず。是を以て必ず重ねて娶るを須ち、三四に至り、母の年子より少なき者有り。後母の弟と、前婦の兄と、衣服飲食、爰に婚宦に及び、士庶貴賤の隔たりに至るまで、俗以て常と為す。
現代語訳
江南では庶子であることを忌み嫌わない。妻を亡くした後は、多くは側室に家事を任せて生涯を終える。かゆみや虫刺されのような小さな揉め事は避けられないにせよ、身分の大枠で線が引かれている。だから争いの恥をさらすことは少ない。河北では側室の子を卑しみ、まともな人の列に加えない。そのため必ず正式に再婚しなければならず、三度四度と重なって、母の年齢が子より若いという例まである。後妻の産んだ弟と、前妻の産んだ兄とで、衣服も食事も、さらには結婚や官職に至るまで、士族と庶民、貴と賤ほどの隔たりがあり、世間はそれを当たり前としている。
解説
南北の風習を並べた比較です。江南は庶子を差別しないので再婚の必要が薄く、結果として家庭内の争いが少ない。河北は庶子を認めないので何度も再婚することになり、兄弟間に身分差が生まれる。顔之推が見ているのは道徳ではなく因果です。ある価値観を厳しく守ろうとした結果、その価値観が守ろうとしたもの——家の秩序——が壊れている。制度の設計でよく起こる転倒です。正しさを純度高く保とうとすると、抜け道を塞ぐために無理が積み上がり、かえって歪む。江南のやり方は理念としてはゆるいが、実際の家はよく保たれた。何を守るための規則かを見失っていないかどうかです。
この章句が説くこと
江左は庶孽を諱まず河北は側出を鄙しむ俗以て常と為す規則の転倒
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