顔氏家訓 / 兄弟
江陵王玄紹、弟孝英、子敏、兄弟三人、特相友愛、所得甘旨新異、非共聚食、必不先嘗、孜孜色貌、相見如不足者。及西臺陷沒、玄紹以形體魁梧、爲兵所圍、二弟争共抱持、各求代死、終不得解、遂并命爾。
新字:江陵王玄紹、弟孝英、子敏、兄弟三人、特相友愛、所得甘旨新異、非共聚食、必不先嘗、孜孜色貌、相見如不足者。及西台陥没、玄紹以形体魁梧、為兵所囲、二弟争共抱持、各求代死、終不得解、遂并命爾。
書き下し
江陵の王玄紹、弟の孝英、子敏、兄弟三人、特に相い友愛す。得る所の甘旨新異なるものは、共に聚まりて食するに非ざれば、必ず先には嘗めず。孜孜たる色貌、相い見ゆること足らざる者の如し。西台の陥没するに及び、玄紹形体魁梧なるを以て、兵の囲む所と為る。二弟争いて共に抱持し、各おの代死を求め、終に解くを得ず、遂に命を并せしのみ。
現代語訳
江陵の王玄紹と、弟の孝英・子敏の三兄弟は、格別に仲がよかった。おいしい物や珍しい物が手に入ると、皆で集まって食べるのでなければ、けっして先に口をつけなかった。互いに向ける表情はいつも熱心で、まるで会い足りないかのようだった。西魏に江陵が陥落したとき、玄紹は体が大きく立派だったために兵に取り囲まれた。二人の弟は争うようにして兄に抱きつき、それぞれ自分が身代わりに死ぬと申し出て、ついに引き離せず、そのまま三人とも命を落とした。
解説
兄弟篇の結びに、顔之推は理屈ではなく光景を置きました。珍しい物が手に入っても皆が揃うまで口をつけない——日常の小さな作法が、最後に三人一緒に死ぬところまで通っています。ここで見るべきは、平時の習慣と有事の行動が地続きだという点です。危機に際してどう振る舞うかは、危機の場で決まるのではなく、それまで何を当たり前にしてきたかで決まる。組織の結束も同じです。危機のときに助け合えるかどうかは、平時に手柄や情報を独り占めしなかったかどうかで、ほとんど決まっています。美談として読み流さず、日常のどの習慣がこの結末につながったかを見ることです。
この章句が説くこと
王玄紹三兄弟共に聚まりて食す各おの代死を求む平時の習慣
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