顔氏家訓 / 兄弟
人之事兄、不可同於事父、何怨愛弟不及愛子乎?是反照而不明也。沛國劉璡、嘗與兄瓛連棟隔壁、瓛呼之數聲不應、良久方答、瓛怪問之、乃曰:「向來未着衣帽故也。」以此事兄、可以免矣。
新字:人之事兄、不可同於事父、何怨愛弟不及愛子乎?是反照而不明也。沛国劉璡、嘗与兄瓛連棟隔壁、瓛呼之数声不応、良久方答、瓛怪問之、乃曰:「向来未着衣帽故也。」以此事兄、可以免矣。
書き下し
人の兄に事うるは、父に事うると同じくすべからず。何ぞ弟を愛すること子を愛するに及ばざるを怨まんや。是れ反照して明らかならざるなり。沛国の劉璡、嘗て兄の瓛と棟を連ね壁を隔つ。瓛之を呼ぶこと数声、応ぜず。良久しくして方めて答う。瓛怪しみて之を問えば、乃ち曰く、「向来未だ衣帽を着けざるが故なり」と。此を以て兄に事えば、以て免るべし。
現代語訳
人が兄に仕えるのに、父に仕えるのと同じようにはしていない。それでいて、兄が弟を愛することが子を愛するのに及ばないと怨むのは筋が通らない。これは自分を照らし返して見ることをしていないのだ。沛国の劉璡は、かつて兄の劉瓛と棟続きの壁一枚を隔てた家に住んでいた。兄が何度も呼んだのに応えず、しばらくしてやっと返事をした。兄が不審に思って理由を尋ねると、こう答えた。「まだ衣服と冠を着けていなかったからです」。こういう態度で兄に仕えるなら、兄弟の禍いは免れられる。
解説
壁一枚隔てた隣から呼ばれて、身支度を整えてから返事をした——それだけの話ですが、前半の理屈があって初めて効きます。人は兄に対して父ほどの礼を尽くさないくせに、兄が自分を子ほどに愛してくれないと不満を言う。「反照して明らかならず」、自分の側を照らし返していない。求める前に払え、という順序の指摘です。劉璡の逸話は、その極端な実例として置かれています。ここまでする必要はないにせよ、近い相手ほど礼を省いておいて、相手からの扱いには不足を言う——この非対称は誰にでもあります。同僚や共同経営者に対する不満の半分は、自分が先に省いた礼の分かもしれません。
この章句が説くこと
未だ衣帽を着けず反照して明らかならず劉璡求める前に払う率先垂範
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