顔氏家訓 / 序致
吾家風教、素爲整密。昔在齠齔、便蒙誘誨、每從兩兄、曉夕溫凊、規行矩步、安辭定色、鏘鏘翼翼、若朝嚴君焉。賜以優言、問所好尚、勵短引長、莫不懇篤。
新字:吾家風教、素為整密。昔在齠齔、便蒙誘誨、毎従両兄、暁夕温凊、規行矩歩、安辞定色、鏘鏘翼翼、若朝厳君焉。賜以優言、問所好尚、勵短引長、莫不懇篤。
書き下し
吾が家の風教は、素より整密たり。昔齠齔に在りしとき、便ち誘誨を蒙る。毎に両兄に従い、暁夕に温凊し、規行矩歩、安辞定色、鏘鏘翼翼として、厳君に朝するが若し。賜うに優言を以てし、好尚する所を問い、短を励まし長を引き、懇篤ならざるは莫し。
現代語訳
我が家の家風と教育は、もとより整って行き届いていた。私が乳歯の抜けかわる幼い頃から、すでに導き教えられていた。いつも二人の兄に従って、朝晩に父母の寝所を暖め涼しくし、歩き方も立ち居も規矩どおり、言葉つきも顔つきも落ち着いて、鈴の音のようにつつしみ深く、厳格な君主に伺候するかのようであった。兄たちは優しい言葉をかけ、私の好みや志すところを問い、短所を励まし長所を伸ばし、どれも心のこもったものだった。
解説
顔之推が自分の受けた教育を語る場面です。注目すべきは、厳しさと温かさが別々の人格に分かれていないことです。立ち居振る舞いは君主に仕えるように厳しく、しかし言葉は優しく、短所は叱らずに励まし、長所は引き出す。「厳」と「慈」を一人の中に同居させています。次の段で家が傾き、この均衡が崩れることが語られるので、ここは失われた基準線として置かれています。人を育てる立場にある人は、自分がどちらかに偏っていないか——厳しいだけ、優しいだけになっていないか——を、この一段に照らして測ることができます。
この章句が説くこと
家風整密規行矩歩短を励まし長を引く厳と慈
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