顔氏家訓 / 勉學
但知私財不入、公事夙辦、便云我能治民、不知誠己刑物、執轡如組、反風滅火、化鴟為鳳之術也。但知抱令守律、早刑晚舍、便云我能平獄、不知同轅觀罪、分劍追財、假言而奸露、不問而情得之察也。爰及農商工賈、廝役奴隸、釣魚屠肉、飯牛牧羊、皆有先達、可為師表、博學求之、無不利於事也。
新字:但知私財不入、公事夙辦、便云我能治民、不知誠己刑物、執轡如組、反風滅火、化鴟為鳳之術也。但知抱令守律、早刑晩舎、便云我能平獄、不知同轅観罪、分剣追財、仮言而奸露、不問而情得之察也。爰及農商工賈、廝役奴隸、釣魚屠肉、飯牛牧羊、皆有先達、可為師表、博学求之、無不利於事也。
書き下し
但だ私財入らず、公事夙に辦ずるを知りて、便ち我能く民を治むと云う。己を誠にし物を刑し、轡を執ること組の如く、風を反し火を滅し、鴟を化して鳳と為すの術を知らざるなり。但だ令を抱き律を守り、早く刑し晚く舎くを知りて、便ち我能く獄を平らぐと云う。轅を同じくして罪を観、剣を分かちて財を追い、言を仮りて奸露れ、問わずして情を得るの察を知らざるなり。爰に農商工賈、廝役奴隷、魚を釣り肉を屠り、牛に飯し羊を牧するに及ぶまで、皆な先達有り、師表と為すべし。博く学びて之を求めば、事に利あらざるは無きなり。
現代語訳
ただ私財を懐に入れず、公務を早く片づけることを知っただけで、自分も民を治められると言う。自分を誠実にして人の手本となり、手綱を組紐のように操り、風を返し火を消し、悪鳥を鳳凰に変えるような術を知らない。ただ法令を守り、早く刑し遅く許すことを知っただけで、自分も裁判ができると言う。同じ車で罪を見抜き、剣を分けて財を追い、言葉をかけて悪事を露わにし、問わずして実情を掴む洞察を知らない。さらに農民や商人、職人や行商人、下働きや奴隷、魚を釣る者、肉を屠る者、牛を飼い羊を牧する者に至るまで、みな先達がいて、手本とすべきである。広く学んでそれを求めれば、物事に役立たないことはない。
解説
前段に続いて、表面的な理解の例を二つ挙げます。私財を懐に入れず公務を早く片づける——これは治政の必要条件ですが十分条件ではない。法令を守り刑と赦を運用する——これも裁判の入口にすぎない。どちらも「できていて当然のこと」を、能力の証明だと思い込む型です。そして結びが開かれています。農民から羊飼いに至るまで、どの職にも先達がいて手本になる。学ぶ相手を士大夫に限っていません。自分の職種の外にも先達がいる、という視野が最後に置かれています。
この章句が説くこと
公事夙に辦ずるを知りて我能く民を治むと云う問わずして情を得るの察皆な先達有り師表と為すべし学問
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