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顔氏家訓 / 終制

今年老疾侵、儻然奄忽、豈求備禮乎?一日放臂、沐浴而已、不勞復魄、殮以常衣。先夫人棄背之時、屬世荒饉、家塗空迫、兄弟幼弱、棺器率薄、藏內無磚。吾當松棺二寸、衣帽已外、一不得自隨、床上唯施七星板、至如蠟弩牙、玉豚、錫人之屬、並須停省、糧罌明器、故不得營、碑志旒旐、彌在言外。

新字:今年老疾侵、儻然奄忽、豈求備礼乎?一日放臂、沐浴而已、不労復魄、殮以常衣。先夫人棄背之時、属世荒饉、家塗空迫、兄弟幼弱、棺器率薄、蔵内無磚。吾当松棺二寸、衣帽已外、一不得自随、床上唯施七星板、至如蠟弩牙、玉豚、錫人之属、並須停省、糧罌明器、故不得営、碑志旒旐、弥在言外。

書き下し

今年老い疾侵す。儻然として奄忽たらば、豈に備礼を求めんや。一日臂を放たば、沐浴するのみ。復魄を労せず、殮するに常衣を以てせよ。先夫人の棄背の時、世の荒饉に属し、家塗空迫し、兄弟幼弱にして、棺器率ね薄く、蔵内に磚無し。吾は当に松棺二寸、衣帽已外、一も自ら随うを得ざるべし。牀上には唯だ七星板を施すのみ。蠟弩牙・玉豚・錫人の属の如きに至りては、並びに須らく停省すべし。糧罌明器は、故より営むを得ず。碑志旒旐は、弥いよ言外に在り。

現代語訳

今は年老いて病に侵されている。もし急に息絶えたなら、どうして整った礼式など求めようか。ある日腕が落ちたら、湯灌をするだけでよい。魂呼びの儀式で手間をかけるな。納棺には普段着を用いよ。亡き母が世を去ったときは、世は飢饉のさなかで、家は空乏し、兄弟は幼く、棺はおおむね薄く、墓室の内側に磚も敷けなかった。私は厚さ二寸の松の棺とし、衣と帽子のほかは、何一つ持たせるな。寝台の上にはただ七星板を敷くだけでよい。蝋の弩牙、玉の豚、錫の人形といった類は、すべて省け。食糧の壺や副葬品は、もとより用意するな。石碑や墓誌や旗幟は、言うまでもない。

解説

自分の葬儀を、削れるだけ削るように指示した一段です。湯灌だけ、普段着で納棺、松の棺は二寸、副葬品は一切なし、碑も墓誌も旗も不要。しかし理由が禁欲や思想ではありません。「先夫人の棄背の時…棺器率ね薄く、蔵内に磚無し」——母が飢饉の中で薄い棺に葬られたから。母より手厚くされることを、自分に許さないという判断です。個人の趣味ではなく、先に亡くなった人との釣り合いで決めている。何をどこまでするかを、自分の好みではなく、過去の誰かとの関係で決める。それが基準になるという型です。

この章句が説くこと

殮するに常衣を以てせよ松棺二寸蠟弩牙玉豚錫人の属並びに停省すべし釣り合い倹約

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