顔氏家訓 / 終制
計吾兄弟、不當仕進、但以門衰、骨肉單弱、五服之內、傍無一人、播越他鄉、無復資蔭、使汝等沈淪廝役、以為先世之恥、故靦冒人間、不敢墜失。兼以北方政教嚴切、全無隱退者故也。
新字:計吾兄弟、不当仕進、但以門衰、骨肉単弱、五服之内、傍無一人、播越他鄉、無復資蔭、使汝等沈淪廝役、以為先世之恥、故靦冒人間、不敢墜失。兼以北方政教厳切、全無隠退者故也。
書き下し
吾が兄弟を計るに、当に仕進すべからず。但だ門衰え、骨肉単弱にして、五服の内、傍らに一人も無きを以てなり。他郷に播越し、復た資蔭無く、汝等をして厮役に沈淪せしめ、以て先世の恥と為さん。故に靦冒して人間にあり、敢えて墜失せず。兼ぬるに北方の政教厳切にして、全く隠退する者無きを以ての故なり。
現代語訳
私たち兄弟のことを考えれば、本来は官に就くべきではなかった。ただ家門が衰え、身内が少なく、五服の範囲に一人も頼れる者がいないからである。他郷に流れ、頼るべき庇護もなく、お前たちを下働きに落ち込ませては、先祖に対する恥となる。だから恥を忍んで世間に身を置き、あえて家を失わないようにしてきた。加えて北方の政治と教化が厳しく、まったく隠退という道がなかったからでもある。
解説
官に就き続けた理由を弁明した一段です。本来は仕えるべきでなかった、と自分でも認めている。それでも続けたのは、身内が少なく、子どもたちを下働きに落とすわけにいかなかったから。そして北方では隠退という選択肢自体がなかったから。「靦冒して人間にあり」——恥を忍んで世間に身を置いた。理想を掲げてそのとおりにできなかったことを、言い訳ではなく事情として並べています。子に何かを説く人が、自分がそのとおりに生きられなかった理由を書き残す。これがあるから、この書の教えは説教にならずに済んでいます。
この章句が説くこと
当に仕進すべからず汝等をして厮役に沈淪せしむ靦冒して人間にあり果たせなかった理由
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