顔氏家訓 / 歸心
梁世有人、常以雞卵白和沐、云使髮光、每沐輒二三十枚。臨死、髮中但聞啾啾數千雞雛聲。
新字:梁世有人、常以雞卵白和沐、云使髪光、毎沐輒二三十枚。臨死、髪中但聞啾啾数千雞雛声。
書き下し
梁世に人有り、常に鶏卵の白を以て和して沐す。髪をして光らしむと云う。沐する毎に輒ち二三十枚なり。死に臨みて、髪中に但だ啾啾たる数千の鶏雛の声を聞くのみ。
現代語訳
梁の時代にある人がいて、いつも鶏卵の白身を混ぜて髪を洗っていた。髪に艶を出すためだという。洗うたびに二、三十個を使った。死ぬ間際になると、髪の中からただ、ちゅうちゅうという数千の雛の声が聞こえるばかりであった。
解説
顔之推が「数条を示そう」と予告した実例の一つ目です。髪の艶のために一度に二、三十個の卵を使い続けた人が、死の間際に髪から雛の声を聞いた。当時の因果応報譚として記録されたものです。史実として読むものではありませんが、この話が選ばれた理由は考える価値があります。殺意も悪意もなく、ただ身だしなみのために大量の卵を消費した。日常の何気ない消費が、積み重なると膨大な数になるという感覚が、この説話の芯にあります。自分が日々消費しているものの総量を、数として意識したことがあるかどうか。
この章句が説くこと
鶏卵の白を以て沐す啾啾たる数千の鶏雛の声因果応報譚消費の総量
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