顔氏家訓 / 歸心
世有祝師及諸幻術、猶能履火蹈刃、種瓜移井、倏忽之間、十變五化。人力所為、尚能如此、何況神通感應、不可思量、千里寶幢、百由旬座、化成凈土、踴出妙塔乎?
新字:世有祝師及諸幻術、猶能履火蹈刃、種瓜移井、倏忽之間、十変五化。人力所為、尚能如此、何況神通感応、不可思量、千里宝幢、百由旬座、化成凈土、踴出妙塔乎?
書き下し
世に祝師及び諸の幻術有り、猶お能く火を履み刃を蹈み、瓜を種え井を移す。倏忽の間に、十変五化す。人力の為す所すら、尚お能く此くの如し。何ぞ況んや神通感応の、思量すべからず、千里の宝幢、百由旬の座、化して浄土と成り、踴きて妙塔を出だすをや。
現代語訳
世には呪術師やさまざまな幻術があって、火の上を歩き刃の上を踏み、その場で瓜を育て井戸を移してみせる。またたく間に十度も五度も変化する。人の力でできることでさえ、これほどのことができる。まして神通力による感応が、推し量れないほどのものであり、千里の宝の幢や、百由旬もの座席が、変じて浄土となり、湧き出して妙なる塔となるのは、なおさらではないか。
解説
人力でできることの範囲を上に引き上げて、それより上を推定する論法です。呪術師でさえ火渡りや瞬間の変化をやってみせる、まして神通力ならなおさら、と。この推論には飛躍があります。人力の幻術は仕掛けのある芸ですから、そこから神通力を推すことはできません。顔之推が信仰の文脈で最も踏み込んだ箇所であり、彼自身の信仰の表明として読むべきものです。ただし直前の段との組み合わせで見ると、意図は分かります。人が信じられる範囲は経験に縛られている、だからその境目をもっと外に置いてみよ、という誘導です。論証としては弱く、その弱さも含めて記録に値します。
この章句が説くこと
祝師と幻術火を履み刃を蹈む人力の為す所すら尚お此くの如し推論の飛躍
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