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顔氏家訓 / 誡兵

頃世亂離、衣冠之士、雖無身手、或聚徒眾、違棄素業、僥幸戰功。吾既羸薄、仰惟前代、故寘心於此、子孫誌之。孔子力翹門關、不以力聞、此聖證也。吾見今世士大夫、纔有氣幹、便倚賴之、不能被甲執兵、以衛社稷、但微行險服、逞弄拳腕、大則陷危亡、小則貽恥辱、遂無免者。

新字:頃世乱離、衣冠之士、雖無身手、或聚徒眾、違棄素業、僥幸戦功。吾既羸薄、仰惟前代、故寘心於此、子孫誌之。孔子力翹門関、不以力聞、此聖證也。吾見今世士大夫、纔有気幹、便倚頼之、不能被甲執兵、以衛社稷、但微行険服、逞弄拳腕、大則陥危亡、小則貽恥辱、遂無免者。

書き下し

頃世乱離し、衣冠の士、身手無しと雖も、或いは徒衆を聚め、素業を違棄して、戦功を僥倖す。吾既に羸薄なり。仰いで前代を惟い、故に心を此に寘く。子孫之を志せ。孔子は門関を力翹するも、力を以て聞こえず。此れ聖証なり。吾今世の士大夫を見るに、纔かに気幹有れば、便ち之に倚頼す。甲を被り兵を執りて、以て社稷を衛る能わず。但だ微行険服し、拳腕を逞弄す。大なれば則ち危亡に陥り、小なれば則ち恥辱を貽す。遂に免るる者無し。

現代語訳

近ごろの世は乱れ離散し、士人でありながら腕っぷしもないのに、あるいは徒党を集め、本来の家業を捨てて、戦功に僥倖を求める者がいる。私はもとより体が弱い。仰いで前代を思い、だからこの点に心を留めた。子孫はこれを心に刻め。孔子は城門のかんぬきを持ち上げるほどの力があったが、力によって名を知られることはなかった。これが聖人の証拠である。私は今の世の士大夫を見るに、少しばかり気力と腕があると、すぐそれに頼る。鎧を着て武器を執り、国家を守ることはできない。ただ目立たぬ格好で危ない服装をし、腕っぷしを振り回すだけである。大きくは危亡に陥り、小さくは恥辱を残す。ついに免れる者はいない。

解説

孔子は城門のかんぬきを持ち上げるほどの力持ちだったが、力で名を知られることはなかった——この一句が核心です。能力があることと、それで名を成すことは別。持っていても使わない選択があります。それに対して当時の士大夫は、少し腕があるとすぐそれに頼った。しかも国家を守るためではなく、腕っぷしを振り回すだけ。「大なれば則ち危亡に陥り、小なれば則ち恥辱を貽す」。自分の得意な能力に頼りすぎると、その能力が使える場面ばかりを選ぶようになります。持っているが使わないという選択肢を、意識して持っておくことです。

この章句が説くこと

孔子門関を力翹す力を以て聞こえず拳腕を逞弄す持っても使わない慎み

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