顔氏家訓 / 省事
舉曹貴賤、咸以為然。有一禮官、恥為此讓、苦欲留連、強加考核。機杼既薄、無以測量、還復采訪訟人、窺望長短、朝夕聚議、寒暑煩勞、背春涉冬、竟無予奪、怨誚滋生、赧然而退、終為內史所迫:此好名之辱也。
新字:舉曹貴賤、咸以為然。有一礼官、恥為此譲、苦欲留連、強加考核。機杼既薄、無以測量、還復采訪訟人、窺望長短、朝夕聚議、寒暑煩労、背春渉冬、竟無予奪、怨誚滋生、赧然而退、終為内史所迫:此好名之辱也。
書き下し
曹を挙げて貴賤、咸な以て然りと為す。一礼官有り、此の譲を為すを恥じ、苦ろに留連せんと欲し、強いて考核を加う。機杼既に薄く、以て測量する無し。還た復た訟人を采訪し、長短を窺望す。朝夕聚議し、寒暑煩労す。春に背き冬に渉るも、竟に予奪無し。怨誚滋く生じ、赧然として退く。終に内史の迫る所と為る。此れ名を好むの辱なり。
現代語訳
部署を挙げて身分の高い者も低い者も、みなその通りだとした。ところが一人の礼官がいて、この辞退を恥として、しつこく引き受けようとし、無理に審査を加えた。もともと才覚が薄く、測量する手段もない。そこでかえって争っている当人たちに聞いて回り、双方の優劣をうかがった。朝も夕も集まって議論し、寒暑を通じて煩わしく労した。春を過ぎ冬に及んでも、ついに判定が下せなかった。怨みと嘲りが次々に生じ、赤面して退いた。最後には内史に催促される羽目になった。これが名声を好むことの恥辱である。
解説
前段で全員が辞退に同意した後、一人だけが引き受けた結末です。断ることを恥だと感じたのが動機でした。能力も測定手段もないので、争っている当事者に聞いて回るしかない。一年近く議論して結論は出ず、怨みと嘲りを買い、赤面して退いた。「此れ名を好むの辱なり」——名声を好んだことが、恥に変わりました。断ることを弱さと感じて引き受けた仕事が、最も評判を落とす。断る判断ができないのは謙虚さではなく、自分をよく見せたい気持ちの裏返しであることが多い。引き受ける前に、手段があるかを確かめることです。
この章句が説くこと
此の譲を為すを恥ず機杼既に薄し竟に予奪無し名を好むの辱
関連する章句
-
『顔氏家訓』省事君子は当に道を守り徳を崇び、価を蓄えて時を待つべし。爵禄登らざるは、信に天命に由る。須らく趨競を求め、羞慚を顧みず、材能を比較し、功伐を斟量し、色を厲しくし声を揚げ、東に怨み西に怒るべけんや。或いは宰相の瑕疵を劫持して、酬謝を獲る有り。或いは時人の視聴を諠聒して、発遣せられんことを求むる有り。此を以て官を得るを、才力と為すと謂う。何ぞ食を盗みて飽くを致し、衣を窃みて温を取るに異ならんや。世に躁競して官を得る者を見れば、便ち『索めずんば何ぞ獲ん』と謂う。時運の来たるは、求めざるも亦た至るを知らざるなり。静退して未だ遇わざる者を見れば、便ち『為さずんば胡ぞ成らん』と謂う。風雲与せざれば、徒らに求むるも益無きを知らざるなり。凡そ求めずして自ら得、求めて得ざる者、焉んぞ勝げて算うべけんや。
-
『顔氏家訓』省事今世の睹る所、瑾瑜を懐き蘭桂を握る者は、悉く之を為すを恥ず。門を守り闕に詣り、書を献じ計を言うは、率ね多く空薄にして、高く自ら矜誇す。経略の大体無く、咸な秕糠の微事なり。十条の中、一も采るに足らず。縦い時務に合するも、已に先覚に漏る。知らざるを謂うに非ず、但だ知りて行わざるを患うるのみ。或いは奸私を発かれ、面のあたり相い酬証す。事途回穴し、翻って愆尤を懼る。人主外は声教を護り、脱がれて含養を加う。此れ乃ち僥倖の徒なり。与に肩を比ぶるに足らざるなり。
-
『顔氏家訓』省事斉の季世、多く財貨を以て外家に托附し、女謁を諠動す。守宰を拝する者は、印組光華、車騎輝赫、栄は九族を兼ね、貴を一時に取る。而して執政の患う所と為り、随いて伺察せらる。既に利を以て得れば、必ず利を以て殆うし。微かに風塵に染まれば、便ち肅正に乖く。坑阱殊に深く、瘡痏未だ復せず。縦い死を免るるを得るも、家を破らざるは莫し。然る後に臍を噬むも、亦復た何ぞ及ばんや。吾南より北に及ぶまで、未だ嘗て一言も時人と身分を論ぜざるなり。通達する能わざるも、亦た尤む無し。
-
『顔氏家訓』省事近世に両人有り、朗悟の士なり。性営綜多く、略ぼ成名無し。経は以て問を待つに足らず、史は以て討論するに足らず、文章は集録に伝うべき無く、書跡は未だ以て留めて愛翫するに堪えず。卜筮は六を射て三を得、医薬は十を治めて五を差やす。音楽は数十人の下に在り、弓矢は千百人の中に在り。天文・画絵・棋博・鮮卑語・胡書・胡桃油を煎ずること・錫を煉りて銀と為すこと、此くの如きの類、略ぼ梗概を得るも、皆な通熟せず。惜しいかな、彼の神明を以て、若し其の異端を省かば、当に精妙なるべし。
-
『顔氏家訓』終制吾が兄弟を計るに、当に仕進すべからず。但だ門衰え、骨肉単弱にして、五服の内、傍らに一人も無きを以てなり。他郷に播越し、復た資蔭無く、汝等をして厮役に沈淪せしめ、以て先世の恥と為さん。故に靦冒して人間にあり、敢えて墜失せず。兼ぬるに北方の政教厳切にして、全く隠退する者無きを以ての故なり。
-
『顔氏家訓』省事王子晋云う、「饔を佐くれば嘗むるを得、闘を佐くれば傷つくを得」と。此れ善を為さば則ち預り、悪を為さば則ち去り、人の非義の事に党するを欲せざるを言うなり。凡そ物に損ある者は、皆な与ること無かれ。然り而して窮鳥懐に入るは、仁人の憫れむ所なり。況んや死士我に帰するをや。当に之を棄つべけんや。伍員の漁舟に托し、季布の広柳に入り、孔融の張倹を蔵し、孫嵩の趙岐を匿すは、前代の貴ぶ所にして、吾の行う所なり。此を以て罪を得るとも、心に甘んじて目を瞑らん。