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顔氏家訓 / 勉學

梁世有蔡朗者諱純、既不涉學、遂呼蓴為露葵。面牆之徒、遞相仿效。承聖中、遣一士大夫聘齊、齊主客郎李恕問梁使曰:「江南有露葵否?」答曰:「露葵是蓴、水鄉所出。卿今食者綠葵菜耳。」李亦學問、但不測彼之深淺、乍聞無以核究。

新字:梁世有蔡朗者諱純、既不渉学、遂呼蓴為露葵。面牆之徒、逓相仿効。承聖中、遣一士大夫聘斉、斉主客郎李恕問梁使曰:「江南有露葵否?」答曰:「露葵是蓴、水鄉所出。卿今食者綠葵菜耳。」李亦学問、但不測彼之深浅、乍聞無以核究。

書き下し

梁世に蔡朗なる者有り、純を諱む。既に学に渉らず、遂に蓴を呼びて露葵と為す。面牆の徒、逓いに相い仿效す。承聖中、一士大夫を遣わして斉に聘せしむ。斉の主客郎の李恕、梁の使に問いて曰く、「江南に露葵有りや否や」と。答えて曰く、「露葵は是れ蓴なり。水郷の出だす所なり。卿が今食う者は緑葵の菜なるのみ」と。李も亦た学問あるも、但だ彼の深浅を測らず、乍ち聞きて以て核究する無し。

現代語訳

梁の時代に蔡朗という者がいて、亡き親の名が「純」だったのを忌んだ。もともと学問をしていなかったので、そのまま蓴菜を「露葵」と呼んだ。壁に向かうように無学な者たちが、次々にそれを真似た。承聖年間に、一人の士大夫を北斉に使者として遣わした。北斉の主客郎である李恕が、梁の使者に尋ねた。「江南には露葵がありますか」。使者は答えた。「露葵とは蓴菜のことです。水郷で採れます。あなたが今食べているのは緑葵という菜にすぎません」。李恕も学問のある人だったが、相手の学識の程度を測れず、その場で聞いただけで確かめようがなかった。

解説

一人の避諱から生まれた誤称が、真似されて広まり、ついに外交の場で通用してしまった話です。蔡朗は亡き親の名を避けて蓴を露葵と言い換えただけでした。それを無学な人々が真似た。数十年後、梁の使者は「露葵とは蓴のことです」と自信をもって北斉の役人に説明し、相手も学識はあったのにその場では確かめようがなく、通ってしまいました。誤りが権威をまとう過程が丁寧に描かれています。個人の事情による例外が、真似され、標準になり、外に対して主張される。組織の中の例外的な運用が、いつのまにか正式なルールとして外部に説明されていないかを確かめる価値があります。

この章句が説くこと

蓴を呼びて露葵と為す面牆の徒逓いに相い仿効す誤りが標準になる

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