顔氏家訓 / 勉學
世人讀書者、但能言之、不能行之、忠孝無聞、仁義不足、加以斷一條訟、不必得其理、宰千戶縣、不必理其民、問其造屋、不必知楣橫而梲豎也、問其為田、不必知稷早而黍遲也、吟嘯談謔、諷詠辭賦、事既優閒、材增迂誕、軍國經綸、略無施用:故為武人俗吏所共嗤詆、良由是乎!
新字:世人読書者、但能言之、不能行之、忠孝無聞、仁義不足、加以断一条訟、不必得其理、宰千戸県、不必理其民、問其造屋、不必知楣横而梲豎也、問其為田、不必知稷早而黍遅也、吟嘯談謔、諷詠辞賦、事既優閒、材增迂誕、軍国経綸、略無施用:故為武人俗吏所共嗤詆、良由是乎!
書き下し
世人の書を読む者は、但だ能く之を言いて、之を行う能わず。忠孝聞こゆる無く、仁義足らず。加うるに一条の訟を断つに、必ずしも其の理を得ず。千戸の県を宰するに、必ずしも其の民を理めず。其の屋を造るを問うに、必ずしも楣は横にして梲は竪なるを知らず。其の田を為るを問うに、必ずしも稷は早くして黍は遅きを知らず。吟嘯談謔し、辞賦を諷詠す。事既に優閑にして、材は迂誕を増す。軍国の経綸、略ぼ施用無し。故に武人俗吏の共に嗤詆する所と為るは、良に是に由るか。
現代語訳
世間で書を読む者は、ただ口で言えるだけで、実行することができない。忠や孝で評判になることもなく、仁や義も足りない。そのうえ一件の訴訟を裁くにも、必ずしも道理にかなった判断ができない。千戸の県を治めるにも、必ずしも民を治められない。家の造り方を聞かれても、梁は横に短い柱は縦にと知っているとは限らない。田の作り方を聞かれても、粟は早く黍は遅いと知っているとは限らない。詩を吟じ談笑し、辞や賦を口ずさむ。仕事は暇で、才能は現実離れするばかり。軍事や国政の運営には、ほとんど使いようがない。だから武人や下級役人からそろって嘲られ罵られるのは、まことにこのせいであろう。
解説
読書人への痛烈な批判です。訴訟を裁けない、県を治められない、家の造りも田の作り方も知らない。にもかかわらず詩を吟じて暇を潰し、才能は現実離れするばかり。「武人俗吏の共に嗤詆する所と為る」——現場の人間から馬鹿にされるのは当然だ、と自分の属する階層を切り捨てています。顔之推自身が士大夫であることを考えると、これは自己批判です。知識が実務の判断に接続していない状態を、彼は最も嫌いました。会議で立派な議論をする人が、実際の判断を求められると何も決められない。学んだことと、現場で使える判断のあいだには距離があり、それを埋める作業は別に要ります。
この章句が説くこと
但だ能く之を言いて之を行う能わず楣横に梲竪稷早く黍遅し知識と判断学問
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