顔氏家訓 / 風操
禮經:父之遺書、母之杯圈、感其手口之澤、不忍讀用。政爲常所講習、讎校繕寫、及偏加服用、有迹可思者耳。若尋常墳典、爲生什物、安可悉廢之乎?旣不讀用、無容散逸、惟當緘保、以畱後世耳。
新字:礼経:父之遺書、母之杯圏、感其手口之沢、不忍読用。政為常所講習、讎校繕写、及偏加服用、有迹可思者耳。若尋常墳典、為生什物、安可悉廃之乎?既不読用、無容散逸、惟当緘保、以畱後世耳。
書き下し
礼経に、父の遺書、母の杯圏は、其の手口の沢に感じて、読み用うるに忍びずとす。政に常に講習し、讎校繕写し、及び偏えに服用を加え、迹の思うべき有る者の為なるのみ。若し尋常の墳典、生を為すの什物ならば、安んぞ悉く之を廃すべけんや。既に読み用いずんば、散逸を容るる無かれ。惟だ当に緘保して、以て後世に留むべきのみ。
現代語訳
『礼記』では、父の遺した書物、母の使った杯や器は、その手と口の温もりが偲ばれて、読んだり使ったりするに忍びないとする。それはまさに、常に読み習い、校訂し書き写し、あるいは特に愛用していて、跡をたどって偲べるものについての話である。もしありふれた古典や、生活のための日用品であれば、どうしてそのすべてを使わずにおけようか。ただ、読まず使わないと決めたなら、散り散りに失わせてはならない。ただ封をして保管し、後世に残すべきである。
解説
形見をどう扱うかについての実務的な整理です。使うに忍びないのは、本人が読み込み書き入れ愛用したもの——手の跡が残るものに限る。ありふれた本や日用品まで封印していたら暮らしが立ちません。範囲を限定したうえで、封印すると決めたものについては「散逸を容るる無かれ」と条件を付けます。使わないなら、代わりに確実に保管し、後の世代に渡せ。手をつけないことと放置することは違う、という区別です。事業でも、使わないと決めた資産や記録が、そのまま行方不明になることがよくあります。使わない決定には、保管の設計が伴わなければ意味がありません。
この章句が説くこと
父の遺書母の杯圏手口の沢緘保して後世に留む使わない決定と保管孝敬意
関連する章句
-
論語・里仁篇子曰く、三年父の道を改むること無きは、孝と謂う可し。
-
論語・為政篇孟懿子孝を問う。子曰く、「違(たが)うこと無かれ。」樊遅御(ぎょ)す。子之に告げて曰く、「孟孫我に孝を問う。我対えて曰く、違(たが)うこと無かれと。」樊遅が曰く、「何の謂(いい)ぞや。」子曰く、「生きては之に事(つか)うるに礼を以てし、死しては之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす。」
-
『論語と算盤』教育と情誼・孝は強ふべきものに非ずゆえに私は子に孝をさせるのでは無い、親が孝をさせるようにしてやるべきだという根本思想で子女等に臨み、子女等がすべて私の思うようにならぬからとて、これを不孝の子だとは思わぬことにしている。
-
『君子訓』巻之下是始て国を得給ふ先公の心にて、君子業を創め統を垂れて継ぐべきを為すの意なり。其子孫たる人は、其先祖の大なる勲労を以て国を得給ふことの難きをおもひ、其先祖を尊び、其志を継ぎ、其法を守りて永く国土を保ち、人民を治め給はば、是其先祖の志にかなひて、諸侯の孝行是より大なるはなし。もし先祖の国を得給ふことの難き事を思はず、我が身何の辛労もなく、居ながら国を領して、其富貴安楽を受け、恣に驕り、酒宴遊楽を事とし、剰へ我が才智に誇り、先祖を侮り、其定め置き給ひし家法を破り、又国民を苦め、政法を猥にして、終に其臣民に背かれ、国土を失ふに至るは、諸侯の不孝是より大なるはなし。此思ふと思はざるとの二は、国家の治乱存亡の機なり。諸侯の子孫たる人、此二の機を察して、常に慎みて徳を修め孝を行ひ給はば、其後栄永く伝はりて、令名限りなかるべし。
-
『童子問』卷中問ふ。何をか達孝と謂ふ。曰く、達孝なる者は、天下に通ずるの孝にして、一人の小孝に非ざるを謂ふなり。夫れ飲食供奉、左右就養する者は、人子の常職にして、以て孝と為すに足らず。惟善く人の志を継ぎ、善く人の事を述べ、身を立て道を行ひ、名を後世に揚げて、以て父母を顕して、而る後に孝と称するに足るなり。孔子曰く、孟荘子の孝や、其の他は能くすべきなり。其の父の臣と父の政とを改めざるは、是れ能くし難きなり、と。荘子の父献子は、魯の賢大夫にして、名を諸侯に顕す。其の臣は皆献子の挙ぐる所、其の政は皆献子の建つる所なり。人材紀綱、以て後嗣に遺すに足る。荘子皆能く之を用ひて改めず。故に夫子之を称す。言ふこころは、荘子の孝、其の能くし難き者固より多し。然れども此の二事の最も能くし難しと為るに如かざるなり。此に由りて之を観れば、其の先業を斁り、其の家声を堕す者は、他の美有りと雖も、不孝の甚だしきなり。孟懿子孝を問ふ。子曰く、生けるには之に事ふるに礼を以てし、死すれば之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす、と。蓋し懿子は魯の上卿にして、民の具に瞻る所なり。而して生事葬祭礼を以てすれば、則ち徒に能く其の家を治めて法有るのみに非ず、亦以て魯国を善くするに足る。君は以て忠と為し、民は以て帰と為し、以て孟氏の祀を永くすべし。故に夫子此を以て之に告ぐ。深いかな。
-
尚書・君陳王若(かく)のごとく曰く、「君陳よ、惟れ爾令徳にして孝恭なり。惟れ孝にして、兄弟に友に、克く有政に施す。汝に命じて茲の東郊を尹(をさ)めしむ、敬せよや。昔周公万民を師保し、民其の徳を懐く。往きて乃の司を慎み、茲に厥の常に率へ。懋めて周公の訓を昭らかにせば、惟れ民其れ乂まらん。我聞く、曰く、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る