顔氏家訓 / 風操
江左朝臣、子孫初釋服、朝見二宮、皆當泣涕、二宮爲之改容。頗有膚色充澤、無哀感者、梁武薄其爲人、多被抑退。裴政出服、問訊武帝、貶瘦枯槁、涕泗滂沱、武帝目送之曰:「裴之禮不死也。」
新字:江左朝臣、子孫初釈服、朝見二宮、皆当泣涕、二宮為之改容。頗有膚色充沢、無哀感者、梁武薄其為人、多被抑退。裴政出服、問訊武帝、貶痩枯槁、涕泗滂沱、武帝目送之曰:「裴之礼不死也。」
書き下し
江左の朝臣、子孫初めて服を釈けば、二宮に朝見するに、皆な当に泣涕すべし。二宮之が為に容を改む。頗る膚色充沢にして、哀感無き者有り。梁武其の人と為りを薄しとし、多く抑退せらる。裴政服を出でて、武帝に問訊す。貶痩枯槁、涕泗滂沱たり。武帝之を目送して曰く、「裴之礼は死せざるなり」と。
現代語訳
江南の朝臣は、その子孫が喪服を脱いだばかりのとき、天子と皇太子に拝謁すると、みな涙を流すべきものとされた。天子と皇太子は、それを見て表情を改めた。中には肌つやがよく、悲しみの色のない者もいた。梁の武帝はその人柄を軽んじ、多くは登用を抑えられた。裴政が喪明けに武帝に伺候したとき、痩せ衰えてやつれ果て、涙と鼻水が滝のように流れた。武帝は彼を見送って言った。「裴之礼はまだ死んでいないな」。
解説
喪明けの拝謁で、悲しみの色があるかどうかが人事評価に直結していた話です。肌つやのよい者は登用を抑えられ、痩せ衰えていた裴政には「亡父の裴之礼はまだ生きている」という最高の言葉が贈られた。ただし、少し前の段で顔之推は「涙の少ない人を強いて責めるな」と書いています。並べて読むと、この慣行への評価は単純ではありません。悲しみの表出を見て人物を測る仕組みは、真情のある人を拾うと同時に、表現の下手な人を落とし、演技のうまい人を通します。見えるものを評価基準にすると、必ず演出が生まれる。人事の評価項目を設計するときに、繰り返し起こる問題です。
この章句が説くこと
裴政涕泗滂沱裴之礼は死せざるなり表出と評価節度
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