学問のすゝめ / 九編・人の性は群居を好み
第二 人の性は群居を好み、けっして独歩孤立するを得ず。夫婦親子にてはいまだこの性情を満足せしむるに足らず、必ずしも広く他人に交わり、その交わりいよいよ広ければ一身の幸福いよいよ大なるを覚ゆるものにて、すなわちこれ人間交際の起こる所以なり。すでに世間に居てその交際中の一人となれば、またしたがってその義務なかるべからず。およそ世に学問と言い、工業と言い、政治と言い、法律と言うも、みな人間交際のためにするものにて、人間の交際あらざればいずれも不用のものたるべし。
書き下し
第二 人の性は群居を好み、けっして独歩孤立するを得ず。夫婦親子にてはいまだこの性情を満足せしむるに足らず、必ずしも広く他人に交わり、その交わりいよいよ広ければ一身の幸福いよいよ大なるを覚ゆるものにて、すなわちこれ人間交際の起こる所以なり。すでに世間に居てその交際中の一人となれば、またしたがってその義務なかるべからず。およそ世に学問と言い、工業と言い、政治と言い、法律と言うも、みな人間交際のためにするものにて、人間の交際あらざればいずれも不用のものたるべし。
現代語訳
第二に、人の性質は群れて住むことを好み、決して一人で歩き孤立してはいられません。夫婦や親子ではまだこの性情を満足させるに足らず、必ず広く他人と交わり、その交わりが広ければ広いほど一身の幸福も大きくなると感じるものです。これが人の交わりの起こる理由です。すでに世間にいてその交わりの中の一人となれば、またそれに従って義務がなくてはなりません。およそ世に学問といい、工業といい、政治といい、法律というのも、みな人の交わりのためにあるもので、人の交わりがなければいずれも不要のものでしょう。
解説
第二の働きが導入されます。人は群れる性質を持ち、交わりが広いほど幸福も大きいという観察から始まります。家族だけでは足りない、という点が重要で、そこから社会という単位が導かれます。そして交わりの一員になれば義務が生じる、と権利と義務が一組にされる。学問も工業も政治も法律も交わりのためにあるという一行は、あらゆる制度の存在理由を一つの根に還元した整理です。
この章句が説くこと
群居交際幸福義務制度
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