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学問のすゝめ / 三編・国は同等なること・力士が病人の腕を握り折る

今、世界中を見渡すに、文明開化とて文学も武備も盛んにして富強なる国あり、あるいは蛮野未開とて文武ともに不行届きにして貧弱なる国あり。一般にヨーロッパ・アメリカの諸国は富んで強く、アジヤ・アフリカの諸国は貧にして弱し。されどもこの貧富・強弱は国の有様なれば、もとより同じかるべからず。しかるにいま、自国の富強なる勢いをもって貧弱なる国へ無理を加えんとするは、いわゆる力士が腕の力をもって病人の腕を握り折るに異ならず、国の権義において許すべからざることなり。

書き下し

今、世界中を見渡すに、文明開化とて文学も武備も盛んにして富強なる国あり、あるいは蛮野未開とて文武ともに不行届きにして貧弱なる国あり。一般にヨーロッパ・アメリカの諸国は富んで強く、アジヤ・アフリカの諸国は貧にして弱し。されどもこの貧富・強弱は国の有様なれば、もとより同じかるべからず。しかるにいま、自国の富強なる勢いをもって貧弱なる国へ無理を加えんとするは、いわゆる力士が腕の力をもって病人の腕を握り折るに異ならず、国の権義において許すべからざることなり。

現代語訳

今、世界中を見渡すと、文明開化といって文学も軍備も盛んで富み強い国があり、あるいは未開といって文武ともに行き届かず貧しく弱い国があります。一般にヨーロッパやアメリカの諸国は富んで強く、アジアやアフリカの諸国は貧しくて弱い。しかしこの貧富や強弱は国の有様ですから、もともと同じであるはずがありません。ところが今、自国が富み強い勢いによって貧しく弱い国に無理を加えようとするのは、いわゆる力士が腕の力で病人の腕を握り折るのと変わりません。国の権利において許すべきでないことです。

解説

第二編の力士の比喩が、国際関係に持ち込まれます。前は隣人の腕でしたが、ここでは病人の腕になり、非対称がさらに強調されています。帝国主義が世界を分割していく時代に、それを国の権利の侵害だと名指しした一段です。国の有様に差があることは認めたうえで、差が侵害の理由にならないと言う。個人の権利論と同じ構えが、そのまま外交に適用されています。

この章句が説くこと

国際強弱侵害力士権利

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