塩鉄論 / 備胡篇
大夫曰:「天子者、天下之父母也。四方之眾、其義莫不願為臣妾、然猶修城郭、設關梁、厲武士、備衛於宮室、所以遠折難而備萬方者也。今匈奴未臣、雖無事、欲釋備、如之何?」
新字:大夫曰:「天子者、天下之父母也。四方之衆、其義莫不願為臣妾、然猶修城郭、設関梁、厲武士、備衛於宮室、所以遠折難而備万方者也。今匈奴未臣、雖無事、欲釈備、如之何?」
書き下し
大夫曰く、天子は、天下の父母なり。四方の眾、其の義として臣妾と為らんことを願わざるは莫し、然れども猶お城郭を修め、關梁を設け、武士を厲まし、宮室に備衛す、難を遠く折きて萬方に備うる所以なり。今、匈奴未だ臣とせず、事無しと雖も、備を釋かんと欲す、之を如何せん。
現代語訳
大夫が言った。「天子は天下の父母である。四方の民は、道理からいえば臣下となることを願わない者はいない。それでもなお城郭を修理し、関所と橋を設け、武士を鍛え、宮室を守らせている。災難を遠くでくじき、あらゆる方角に備えるためだ。いま匈奴はまだ臣従していない。事が起きていないからといって備えを解こうというのは、どういうつもりか」
解説
短いが要点は明快です。事が起きていないことは、備えを解いてよい理由にならない。天子が天下の父母であり、四方の民が本来は従うはずだとしても、現に城郭も関所も守備も置いてある、と。前段が「敵として扱ったから戦になった」と因果をひっくり返したのに対し、こちらは因果ではなく状態だけを示します。匈奴はまだ臣従していない。その一点を根拠に据えた反論です。
この章句が説くこと
事無しと雖も備を釈かんと欲す之を如何せん難を遠く折きて万方に備うる所以なり匈奴未だ臣とせず備え平時防衛
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