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塩鉄論 / 備胡篇

大夫曰:「鄙語曰:『賢者容不辱。』以世俗言之、鄉曲有桀、人尚辟之。今明天子在上、匈奴公為寇、侵擾邊境、是仁義犯而藜藿采。昔狄人侵太王、匡人畏孔子、故不仁者、仁之賊也。是以縣官厲武以討不義、設機械以備不仁。」

新字:大夫曰:「鄙語曰:『賢者容不辱。』以世俗言之、鄉曲有桀、人尚辟之。今明天子在上、匈奴公為寇、侵擾辺境、是仁義犯而藜藿采。昔狄人侵太王、匡人畏孔子、故不仁者、仁之賊也。是以県官厲武以討不義、設機械以備不仁。」

書き下し

大夫曰く、鄙語に曰く、『賢者は容れて辱められず』と。世俗を以て之を言えば、鄉曲に桀有れば、人尚お之を辟く。今、明天子上に在るも、匈奴は公に寇を為し、邊境を侵擾す、是れ仁義犯されて藜藿采らるるなり。昔、狄人は太王を侵し、匡人は孔子を畏せり、故に不仁者は、仁の賊なり。是を以て縣官は武を厲まして以て不義を討ち、機械を設けて以て不仁に備う。

現代語訳

大夫が言った。「俗なことわざに『賢者は寛容であって、辱められることがない』という。だが世間の実際で言えば、村に乱暴者が一人いれば、人はそれを避けて通る。いま賢明な天子が上におられるのに、匈奴は公然と略奪をはたらき、辺境を侵し騒がせている。仁義が犯され、葵も藿も現に摘み取られているのだ。昔、狄の人は太王の地を侵し、匡の人は孔子を脅した。だから不仁の者は、仁にとっての賊である。そこで官は武を励まして不義を討ち、武器を備えて不仁に備えるのだ」

解説

前段の「山に虎豹あれば草は摘まれない」を、そのまま現実で打ち消した段です。**賢明な天子がいるのに、匈奴は公然と侵している。葵も藿も、現に摘み取られている。**さらに太王と孔子を挙げます。徳の高い人物でさえ侵され脅されたではないか、と。徳による抑止という主張に、実際に起きた侵犯を並べて返す形です。ここから篇は「備胡」——匈奴への備えをめぐる、この書で最も長い応酬に入ります。

この章句が説くこと

仁義犯されて藜藿采らるるなり不仁者は仁の賊なり武を厲まして以て不義を討つ抑止備え現実

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