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塩鉄論 / 刺權篇

大夫曰:「官尊者祿厚、本美者枝茂。故文王德而子孫封、周公相而伯禽富。水廣者魚大、父尊者子貴。傳曰:『河、海潤千里。』盛德及四海、況之妻子乎?故夫貴於朝、妻貴於室、富曰茍美、古之道也。孟子曰:『王者與人同、而如彼者、居使然也。』居編戶之列、而望卿相之子孫、是以跛夫之欲及樓季也、無錢而欲千金之寶、不亦虛望哉!」

新字:大夫曰:「官尊者禄厚、本美者枝茂。故文王徳而子孫封、周公相而伯禽富。水広者魚大、父尊者子貴。伝曰:『河、海潤千里。』盛徳及四海、況之妻子乎?故夫貴於朝、妻貴於室、富曰茍美、古之道也。孟子曰:『王者与人同、而如彼者、居使然也。』居編戸之列、而望卿相之子孫、是以跛夫之欲及楼季也、無銭而欲千金之宝、不亦虚望哉!」

書き下し

大夫曰く、官尊き者は祿厚く、本美なる者は枝茂る。故に文王は德ありて子孫封ぜられ、周公は相たりて伯禽富む。水廣き者は魚大に、父尊き者は子貴し。傳に曰く、『河・海は千里を潤す』と。盛德四海に及ぶ、況んや之を妻子に於いてをや。故に夫は朝に貴く、妻は室に貴く、富めば茍くも美なりと曰う、古の道なり。孟子曰く、『王者は人と同じ、而して彼のごとき者は、居の然らしむるなり』と。編戶の列に居りて、卿相の子孫を望むは、是れ跛夫の樓季に及ばんと欲するを以てなり、錢無くして千金の寶を欲す、亦た虛望ならずや。

現代語訳

大夫が言った。「官位の高い者は俸禄が厚く、根が良ければ枝は茂る。だから文王に徳があって子孫は封じられ、周公が宰相となって子の伯禽は富んだ。水が広ければ魚は大きく、父が尊ければ子も貴い。伝にいう、大河や海は千里を潤す、と。盛んな徳が四海に及ぶのだ。まして妻子に及ぶのは当然だろう。だから夫は朝廷で尊く、妻は家で尊い。富めばそれで結構だというのが、昔からの道である。孟子はこう言った、王者も人としては同じだ、それでもああなるのは、置かれた場所がそうさせるのだ、と。庶民の戸籍に並ぶ身でありながら、大臣の子孫と同じ暮らしを望むのは、足の悪い者が名うての俊足に追いつこうとするようなものだ。金もないのに千金の宝がほしいというのは、むなしい望みではないか」

解説

前段の告発への答えが、これです。地位が高ければ待遇が厚いのは当然で、その恩恵が家族に及ぶのも当然だ、と。「水広き者は魚大なり」は事実の観察としては正しく、いまも組織の役職と報酬の関係を説明する言い方として通用します。ただし前段で文学が言ったのは待遇の差ではなく、公の権限を私の利に使っていることでした。答えが論点をずらしている。しかも最後は、望むほうが分不相応だと切り捨てる。答えとしては弱く、次の段で文学が本題に引き戻します。

この章句が説くこと

水広き者は魚大なり居の然らしむるなり官尊き者は禄厚し地位待遇環境

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