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塩鉄論 / 本議篇

文學曰:「古者之賦稅於民也、因其所工、不求所拙。農人納其獲、女工效其功。今釋其所有、責其所無。百姓賤賣貨物、以便上求。間者、郡國或令民作布絮、吏恣留難、與之為市。吏之所入、非獨齊、阿之縑、蜀、漢之布也、亦民間之所為耳。行奸賣平、農民重苦、女工再稅、未見輸之均也。縣官猥發、闔門擅市、則萬物幷收。萬物幷收、則物騰躍。騰躍、則商賈侔利。自市、則吏容奸。豪吏富商積貨儲物以待其急、輕賈奸吏收賤以取貴、未見準之平也。蓋古之均輸、所以齊勞逸而便貢輸、非以為利而賈萬物也。」

新字:文学曰:「古者之賦税於民也、因其所工、不求所拙。農人納其獲、女工効其功。今釈其所有、責其所無。百姓賤売貨物、以便上求。間者、郡国或令民作布絮、吏恣留難、与之為市。吏之所入、非独斉、阿之縑、蜀、漢之布也、亦民間之所為耳。行奸売平、農民重苦、女工再税、未見輸之均也。県官猥発、闔門擅市、則万物幷収。万物幷収、則物騰躍。騰躍、則商賈侔利。自市、則吏容奸。豪吏富商積貨儲物以待其急、軽賈奸吏収賤以取貴、未見準之平也。蓋古之均輸、所以斉労逸而便貢輸、非以為利而賈万物也。」

書き下し

文學曰く、古者の民に賦稅するや、其の工なる所に因り、拙なる所を求めず。農人は其の獲を納れ、女工は其の功を效す。今は其の有する所を釋て、其の無き所を責む。百姓は貨物を賤賣して、以て上の求に便ず。間者、郡國或いは民をして布絮を作らしむるに、吏は恣に留難し、之と市を爲す。吏の入るる所は、獨り齊・阿の縑、蜀・漢の布のみに非ざるなり、亦た民間の爲す所のみ。奸を行い平を賣り、農民は重ねて苦しみ、女工は再び稅せらる。未だ輸の均しきを見ざるなり。縣官猥りに發し、門を闔じて市を擅にすれば、則ち萬物幷せ收む。萬物幷せ收むれば、則ち物騰躍す。騰躍すれば、則ち商賈は利を侔しくす。自ら市すれば、則ち吏は奸を容る。豪吏富商は貨を積み物を儲えて以て其の急を待ち、輕賈奸吏は賤きを收めて以て貴きを取る。未だ準の平らかなるを見ざるなり。蓋し古の均輸は、勞逸を齊しくして貢輸を便ずる所以にして、以て利を爲して萬物を賈するに非ざるなり、と。

現代語訳

文学は言った。「昔、民に税を課すときは、その民が得意とするものによって取り、不得手なものを求めなかった。農民は収穫を納め、機織りの女はその仕事の成果を出した。いまはその民が持っているものを差し置いて、持っていないものを要求する。民は貨物を安く売り払って、お上の求めに応じる。近ごろ、郡国が民に布や綿を作らせるとき、役人はほしいままに難癖をつけて足止めし、民を相手に商売をしている。役人が納めさせるものは、斉や阿の絹、蜀や漢の布だけではない。民間で作ったものまでである。不正を行い公平を売り物にし、農民は二重に苦しみ、機織りの女は二度課税される。輸送が均しいところなど、まだ見たことがない。官がむやみに買い付け、門を閉じて市場を独占すれば、あらゆる物を買い占めることになる。買い占めれば物価は跳ね上がる。跳ね上がれば商人は等しく利を得る。自ら市場に立てば、役人が不正を働く余地ができる。有力な役人と富商は貨物をため込んで急場を待ち、軽薄な商人と不正な役人は安く買って高く取る。価格が平らなところなど、まだ見たことがない。そもそも昔の均輸は、労苦と安楽を均しくして貢納を便利にするためのもので、利を得てあらゆる物を売買するためではない」

解説

制度の理屈に対して、運用の実態で返しました。役人が難癖をつけて足止めし、民を相手に商売をする。持っていない物を要求されるから、民は安く売って現金にする。二重課税になる。買い占めれば物価は上がり、上がれば商人が儲かる。制度が意図した効果と逆のことが、現場では起きている。「未だ輸の均しきを見ず、未だ準の平らかなるを見ず」——名前は均輸・平準だが、均しくも平らでもない、と名実の不一致を突きました。制度の名前で反論せず、現場で何が起きているかだけを並べる。制度を批判する側の作法として、これが最も強い形です。

この章句が説くこと

未だ輸の均しきを見ず其の無き所を責む吏は恣に留難す名実現場主義制度

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