塩鉄論 / 本議篇
大夫曰:「古之立國家者、開本末之途、通有無之用、市朝以一其求、致士民、聚萬貨、農商工師各得所欲、交易而退。易曰:『通其變、使民不倦。』故工不出、則農用乏、商不出、則寶貨絕。農用乏、則穀不殖、寶貨絕、則財用匱。故鹽、鐵、均輸、所以通委財而調緩急。罷之、不便也。」
新字:大夫曰:「古之立国家者、開本末之途、通有無之用、市朝以一其求、致士民、聚万貨、農商工師各得所欲、交易而退。易曰:『通其変、使民不倦。』故工不出、則農用乏、商不出、則宝貨絶。農用乏、則穀不殖、宝貨絶、則財用匱。故塩、鉄、均輸、所以通委財而調緩急。罷之、不便也。」
書き下し
大夫曰く、古の國家を立つる者は、本末の途を開き、有無の用を通じ、市朝もて以て其の求を一にし、士民を致し、萬貨を聚む。農・商・工・師各々欲する所を得て、交易して退く。易に曰く、其の變を通じて、民をして倦まざらしむ、と。故に工出でざれば、則ち農用乏し。商出でざれば、則ち寶貨絕ゆ。農用乏しければ、則ち穀殖えず。寶貨絕ゆれば、則ち財用匱し。故に鹽・鐵・均輸は、委財を通じて緩急を調うる所以なり。之を罷むるは、便ならざるなり、と。
現代語訳
大夫は言った。「昔、国家を立てた者は、本と末の道を開き、有るものと無いものの用を通じ、市場によって人々の求めを一つにまとめ、士や民を集め、あらゆる物資を寄せた。農・商・工・技術者がそれぞれ欲しいものを得て、交易して帰る。『易』に言う、その変化を通じさせ、民を倦ませない、と。だから職人が出てこなければ農具が不足する。商人が出てこなければ貴重な物資が絶える。農具が不足すれば穀物は増えない。物資が絶えれば財は乏しくなる。だから塩・鉄・均輸は、滞った財を通わせて需給の緩急を調えるものである。廃止するのは、便ではない」
解説
大夫が本末という文学の枠組みを、そのまま使って反撃します。本と末は対立するのではなく、末が無ければ本も成り立たない、と。職人がいなければ農具がなく、農具がなければ穀物は増えない。この連鎖の指摘は的確です。相手の用語を使って相手の結論を覆すのは、議論の型として強い。そして「委財を通じて緩急を調う」——滞った財を動かし、需給の波を平らにする。これは現代の物流と在庫管理そのものです。二千年前に、流通の機能をこれだけ明確に言語化していたことは記憶しておく価値があります。
この章句が説くこと
工出でざれば農用乏し委財を通じて緩急を調う本末流通制度実務
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