淮南子 / 人間訓
夫鴻鵠之未孚於卵也,一指蔑之,則靡而無形矣;及至其筋骨之已就,而羽翮之既成也,淩乎浮雲,背負青天,膺摩赤霄,翱翔乎忽荒之上,析惕乎虹蜺之間,雖有勁弩利矰微繳,蒲且子之巧,亦弗能加也。
書き下し
夫れ鴻鵠の未だ卵に孚らざるや、一指もて之を蔑れば、則ち靡びて形無し。其の筋骨の已に就り、羽翮の既に成るに至りては、浮雲を淩ぎ、青天を背負い、膺は赤霄を摩し、忽荒の上に翱翔し、虹蜺の間に析惕たり。勁弩 利矰 微繳 有り、蒲且子の巧なりと雖も、亦た加うる能わざるなり。
現代語訳
大鳥がまだ卵の中で孵らないうちは、指一本で押せば潰れて形もなくなる。だが筋骨ができあがり、羽が生えそろってからは、浮雲を越え、青空を背に負い、胸で赤い天を擦り、果てしない高みを飛び、虹のあいだをひらめき渡る。強い弩も鋭い矢も細い糸も、名人の蒲且子の腕をもってしても、届かせることはできない。
解説
同じ一羽を、いつ扱うか。卵のうちなら指一本、羽がそろえば名手でも届かない。「火は指一本で消せるうちに」と同じ形ですが、こちらは押さえる側ではなく育つ側から見ています。芽のうちに潰されるものと、育ちきって誰にも止められなくなるもの。どちらの側にいるにせよ、勝負がつくのは羽が生えそろう前です。
この章句が説くこと
鴻鵠の未だ卵に孚らざるや一指もて之を蔑れば則ち靡びて形無し其の筋骨の已に就り羽翮の既に成るに至りては浮雲を淩ぎ青天を背負う忽荒の上に翱翔し虹蜺の間に析惕たり勁弩利矰微繳有り蒲且子の巧なりと雖も亦た加うる能わざるなり時期成長
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