淮南子 / 兵略訓
故善用兵者,見敵之虛,乘而勿假也,追而勿舍也,迫而勿去也。擊其猶猶,陵其與與,疾雷不及塞耳,疾霆不暇掩目。善用兵,若聲之與響,若鏜之與鞈,眯不給撫,呼不給吸。當此之時,仰不見天,俯不見地,手不麾戈,兵不盡拔,擊之若雷,薄之若風,炎之若火,淩之若波。敵之靜不知其所守,動不知其所為。故鼓鳴旗麾,當者莫不廢滯崩阤,天下孰敢厲威抗節而當其前者!故淩人者勝,待人者敗,為人杓者死。
新字:故善用兵者,見敵之虚,乗而勿仮也,追而勿舎也,迫而勿去也。擊其猶猶,陵其与与,疾雷不及塞耳,疾霆不暇掩目。善用兵,若声之与響,若鏜之与鞈,眯不給撫,呼不給吸。当此之時,仰不見天,俯不見地,手不麾戈,兵不尽抜,擊之若雷,薄之若風,炎之若火,淩之若波。敵之静不知其所守,動不知其所為。故鼓鳴旗麾,当者莫不廃滞崩阤,天下孰敢厲威抗節而当其前者!故淩人者勝,待人者敗,為人杓者死。
書き下し
故に善く兵を用うる者は、敵の虛を見れば、乘じて假す勿かれ、追いて舍く勿かれ、迫りて去る勿かれ。其の猶猶たるを擊ち、其の與與たるを陵ぐ。疾雷は耳を塞ぐに及ばず、疾霆は目を掩うに暇あらず。善く兵を用うるは、聲の響と、鏜の鞈とのごとし。眯するも撫するに給せず、呼ぶも吸するに給せず。此の時に當たりて、仰ぎて天を見ず、俯して地を見ず。手 戈を麾かず、兵 盡くは拔かず。之を擊つこと雷の若く、之に薄ること風の若く、之を炎くこと火の若く、之を淩ぐこと波の若し。敵は靜かにして其の守る所を知らず、動きて其の爲す所を知らず。故に鼓 鳴り旗 麾けば、當たる者 廢滯崩阤せざる莫し。天下 孰か敢えて威を厲まし節を抗げて其の前に當たる者あらんや。故に人を淩ぐ者は勝ち、人を待つ者は敗れ、人の杓と爲る者は死す。
現代語訳
だからよく兵を用いる者は、敵の隙を見たら、乗じて猶予を与えず、追って手放さず、迫って離れない。ためらっているところを打ち、緩んでいるところを圧する。激しい雷には耳を塞ぐ間がなく、稲妻には目を覆う暇がない。よく兵を用いるのは、声と響き、鐘と撥のようなものだ。目にごみが入っても撫でる間がなく、呼びかけても息を吸う間がない。このときには、仰いでも天が見えず、俯いても地が見えない。手は戈を振らず、武器も抜き切らない。打つことは雷のようで、迫ることは風のようで、焼くことは火のようで、圧することは波のようである。敵は静かにしていても何を守ればよいか分からず、動いても何をすればよいか分からない。だから太鼓が鳴り旗が振られれば、向かい合う者は崩れ落ちないものがない。天下の誰が威を張り節を掲げてその前に立てよう。だから人を圧する者は勝ち、人を待つ者は敗れ、人に振り回される者は死ぬ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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孫子・形篇孫子曰く、昔の善く戦う者は、まず不可勝を為して、以て敵の可勝を待つ。
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葉隠・聞書第十一兵法は身を捨てて討つべし、向(むこ)うも身を捨てて討つ時、對(つい)になる。寢靜まる時と、明離るゝ時が大事なり。そこを勝つは、信心(しんじん)運命なり。又(また)寢所(ねどころ)を人に見すべからず、寢靜まる時と、明離るゝ時が大事なり。是(これ)を心に懸くべしとなり。
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『宋名臣言行録』後集巻十・韓絳熙寧二年九月、夏羌大いに慶州の境に入る。公陝西宣撫使と爲り、諸路の兵を裂きて七將を置き、其の備え無きに間りて互いに出でて之を□つ。是に至りて深く入りて敵を破ること十七戰、皆捷つ。招降すること數萬人。
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『淮南子』兵略訓靜を以て躁に合し、治を以て亂を待ち、無形にして有形を制し、無爲にして變に應ず。未だ敵に勝つを得ざると雖も、敵の勝を得可からざるの道なり。敵 我より先に動けば、則ち是れ其の形を見わすなり。彼 躁がしく我 靜かなれば、則ち是れ其の力を疲れしむるなり。形 見われば則ち勝 制す可し。力 疲るれば則ち威 立つ可し。其の爲す所を視て、因りて之と化す。其の邪正を觀て、以て其の命を制す。之を餌するに欲する所を以てして、以て其の足を疲れしむ。彼 若し間有らば、急ぎ其の隙を填め、其の變を極めて之を束ね、其の節を盡くして之を仆す。敵 若し反って靜かならば、之が爲に奇を出だす。彼 吾に應ぜざれば、獨り其の調を盡くす。若し動きて應ずれば、爲す所を見わす有り。彼 後節を持せば、之と推移す。彼に積む所有れば、必ず虧くる所有り。精 若し左に轉ぜば、其の右陂を陷る。敵 潰えて走らば、後 必ず移す可し。敵 迫りて動かざる、之を名づけて奄遲と曰う。之を擊つこと雷霆の如く、之を斬ること草木の若く、之を耀かすこと火電の若し。疾きを以て速やかならんことを欲す。人 步鋗に及ばず、車 轉轂に及ばず、兵 植木の如く、弩 羊角の如し。人 眾多なりと雖も、勢 敢えて格する莫し。
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『淮南子』兵略訓權勢 必ず形れ、吏卒 專精し、良を選び才を用い、官 其の人を得、計 定まり謀 決し、死生に明らかに、舉錯得失、振驚せざる莫し。故に攻むるに沖隆雲梯を待たずして城 拔け、戰うに兵を交え刃を接するに至らずして敵 破る。必勝の攻めに明らかなればなり。故に兵 必ず勝たざれば、苟くも刃を接せず。攻めて必ず取らざれば、苟くも發を爲さず。故に勝 定まりて而る後に戰い、鈴 縣けて而る後に動く。故に眾 聚まりて虛しく散ぜず、兵 出でて徒らに歸らず。唯だ一動する無し。動けば則ち天を淩ぎ地を振るう。泰山を抗げ、四海を蕩かし、鬼神 移徙し、鳥獸 驚駭す。此くの如くんば、則ち野に校兵無く、國に守城無し。