淮南子 / 兵略訓
今夫天下皆知事治其末,而莫知務修其本,釋其根而樹其枝也。夫兵之所以佐勝者眾,而所以必勝者寡。甲堅兵利,車固馬良,畜積給足,士卒殷軫,此軍之大資也,而勝亡焉。明於星辰日月之運,刑德奇該之數,背鄉左右之便,此戰之助也,而全亡焉。良將之所以必勝者,恒有不原之智,不道之道,難以眾同也。
新字:今夫天下皆知事治其末,而莫知務修其本,釈其根而樹其枝也。夫兵之所以佐勝者眾,而所以必勝者寡。甲堅兵利,車固馬良,畜積給足,士卒殷軫,此軍之大資也,而勝亡焉。明於星辰日月之運,刑徳奇該之数,背鄉左右之便,此戦之助也,而全亡焉。良将之所以必勝者,恒有不原之智,不道之道,難以眾同也。
書き下し
今夫れ天下 皆な其の末を治むるを事とするを知りて、其の本を修むるを務むるを知る莫し。其の根を釋てて其の枝を樹うるなり。夫れ兵の勝を佐くる所以の者は眾くして、必ず勝つ所以の者は寡なし。甲 堅く兵 利く、車 固く馬 良く、畜積 給足し、士卒 殷軫なるは、此れ軍の大資なり。而して勝は焉に亡し。星辰日月の運、刑德奇該の數、背鄉左右の便に明らかなるは、此れ戰の助なり。而して全は焉に亡し。良將の必ず勝つ所以の者は、恒に原づかざるの智、道わざるの道有り。以て眾と同じくし難きなり。
現代語訳
いま天下はみな末を整えることばかりを知って、本を修めることに努めることを知らない。根を捨てて枝を植えているのである。兵において勝ちを助けるものは多いが、必ず勝たせるものは少ない。鎧が堅く武器が鋭く、車が丈夫で馬が良く、蓄えが十分で兵が大勢いるのは、軍の大きな資である。だが勝ちはそこにはない。星や日月の運行、刑徳や奇数偶数の計算、背にする方角や左右の便に通じているのは、戦の助けである。だが全きことはそこにはない。良将が必ず勝てる理由は、常に、たどれない知恵、語れない道にある。それは多くの人と共有しにくい。
解説
「勝を佐くる所以の者は眾くして、必ず勝つ所以の者は寡なし」。装備も兵数も蓄えも、勝ちを助けはするが、勝ちそのものはそこにない。占いや方角の知識も同じ扱いです。では何が決めるのかというと、「原づかざるの智、道わざるの道」。たどれず語れないものだ、と。準備を数え上げて安心することへの、静かな否定になっています。
この章句が説くこと
天下皆な其の末を治むるを事とするを知りて其の本を修むるを務むるを知る莫し其の根を釈てて其の枝を樹うるなり兵の勝を佐くる所以の者は眾くして必ず勝つ所以の者は寡なし甲堅く兵利きは此れ軍の大資なり而して勝は焉に亡し良将の必ず勝つ所以の者は恒に原づかざるの智道わざるの道有り本末
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