淮南子 / 道應訓
齊人淳于髡以從説魏王,魏王辯之。約車十乘,將使荊,辭而行。人以爲從未足也,復以衡説,其辭若然。魏王乃止其行而疎其身。失從心志,而又不能成衡之事。是其所以固也。夫言有宗,事有本,失其宗本,技能雖多,不若其寡也。故周鼎著倕,而使齧其指,先王以見大巧之不可也。故愼子曰:「匠人知爲門,能以門,所以不知門也,故必杜,然後能門」。
新字:斉人淳于髡以従説魏王,魏王弁之。約車十乗,将使荊,辞而行。人以為従未足也,復以衡説,其辞若然。魏王乃止其行而疎其身。失従心志,而又不能成衡之事。是其所以固也。夫言有宗,事有本,失其宗本,技能雖多,不若其寡也。故周鼎著倕,而使齧其指,先王以見大巧之不可也。故慎子曰:「匠人知為門,能以門,所以不知門也,故必杜,然後能門」。
書き下し
齊人 淳于髡 從を以て魏王に説く。魏王 之を辯とす。車十乘を約し、將に荊に使いせしめんとす。辭して行かんとす。人 以爲えらく從は未だ足らずと。復た衡を以て説くに、其の辭 然るが若し。魏王 乃ち其の行を止めて其の身を疎んず。從の心志を失いて、又た衡の事を成す能わず。是れ其の固なる所以なり。夫れ言に宗有り、事に本有り。其の宗本を失わば、技能 多しと雖も、其の寡なきに若かず。故に周鼎に倕を著して、之が指を齧ましむ。先王 以て大巧の不可なるを見す。故に愼子曰く、「匠人は門を爲るを知る。門を以てするも、門を知らざる所以なり。故に必ず杜し、然る後に能く門とす」と。
現代語訳
斉の人の淳于髡が合従の策を魏王に説いた。魏王はそれを弁が立つと認めた。車十乗を用意し、楚へ使いさせようとした。彼は挨拶して出発しようとした。ある人が、合従では不十分だと言った。そこで今度は連衡の策を説いたが、その言い方は前と同じようであった。魏王はその出発を取りやめ、彼を遠ざけた。合従の志を失い、そのうえ連衡の事も成せなかった。これが行き詰まった理由である。言葉には宗があり、事には本がある。その宗と本を失えば、技能が多くてもかえって少ないほうがましだ。だから周の鼎には名工の倕を鋳出し、その指をくわえさせた。先王はそれによって、大いなる巧みさが不可であることを示した。だから慎子は言った、「職人は門の作り方を知っている。だが門を作れることが、かえって門を知らない理由になる。必ず塞ぐことができて、はじめて門とできる」。
解説
この章句が説くこと
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論語・学而篇有子曰く、「其の人と為りや、孝弟にして上を犯すことを好む者は鮮なし。上を犯すことを好まずして乱を作すことを好む者は、未だ之有らざるなり。君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟や者は、其れ仁の本為るか。」
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『淮南子』本經訓古者 天子は一畿、諸侯は一同、各々其の分を守りて、相い侵すを得ず。王道を行わざる者有りて、萬民を暴虐し、地を爭い壤を侵し、政を亂し禁を犯し、之を召せども至らず、之に令すれども行われず、之を禁ずれども止まず、之を誨うれども變ぜざれば、乃ち兵を舉げて之を伐ち、其の君を戮し、其の党を易え、其の墓を封じ、其の社を類し、其の子孫を卜して以て之に代う。晚世は地を廣くし壤を侵すを務め、並兼して已む無く、不義の兵を舉げ、無罪の國を伐ち、不辜の民を殺し、先聖の後を絕つ。大國は出でて攻め、小國は城して守り、人の牛馬を驅り、人の子女を傒ぎ、人の宗廟を毀ち、人の重寶を遷し、血 千里に流れ、暴骸 野に滿つ。以て貪主の欲を澹すは、兵の生ずる所に非ざるなり。故に兵なる者は、暴を討つ所以にして、暴を為す所以に非ず。樂なる者は、和を致す所以にして、淫を為す所以に非ず。喪なる者は、哀を盡くす所以にして、偽を為す所以に非ず。故に親に事うるに道有り、而して愛を務めと為す。朝廷に容有り、而して敬を上と為す。喪に處るに禮有り、而して哀を主と為す。兵を用うるに術有り、而して義を本と為す。本 立ちて道 行われ、本 傷つきて道 廢る。
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呂氏春秋・離謂⑥齊人に淳于髡という者有り。從を以て魏王に説く。魏王、之を辯とし、車十乘を約し、將に荊に之かしめんとす。辭して行かんとし、有た横を以て魏王に説く。魏王乃ち其の行を止む。從の意を失い、又橫の事を失う。夫れ其の能多きは能寡きに若かず。其の辯有るは辯無きに若ず。周鼎に倕を著わして其の指を齕ましむ。先王以て大巧の爲す可からざるを見す有るなり。
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『淮南子』道應訓齊の王后 死す。王 後を置かんと欲して未だ定まらず。群臣をして議せしむ。薛公 王の意に中らんと欲し、因りて十珥を獻じて其の一を美にす。旦日、因りて美珥の在る所を問う。因りて立てて以て王后と爲さんことを勸む。齊王 大いに説び、遂に薛公を尊重す。故に人主の意欲 外に見わるれば、則ち人臣の制する所と爲る。故に老子曰く、「其の兌を塞ぎ、其の門を閉ざせば、終身 勤れず」と。
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『淮南子』說山訓夫れ至巧は劍を用いず、善く閉ざす者は關楗を用いず。淳于髡の失火する者に告ぐるは、此れ其の類なり。清を以て濁に入れば必ず困辱し、濁を以て清に入れば必ず覆傾す。君子の善に於けるや、猶お薪を采る者の一芥を見て之を掇い、青蔥を見れば則ち之を拔くがごとし。天 二氣なれば則ち虹を成し、地 二氣なれば則ち泄藏し、人 二氣なれば則ち病を成す。陰陽は且つ冬にして且つ夏なる能わず。月は晝を知らず、日は夜を知らず。善く射る者は發して的を失わず。射に善きなり。而して射る所に善からず。善く釣る者は失う所無し。釣に善きなり。而して釣る所に善からず。故に善き所有れば、則ち不善なり。鐘の磬とは、之に近づけば則ち鐘の音 充ち、之に遠ざかれば則ち磬の音 章らかなり。物 固より近きは遠きに若かず、遠きは近きに若かざる者有り。
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戦国策・齊欲伐魏齊魏を伐たんと欲す、魏人をして淳于髡(じゅんうこん)に謂わしめて曰く、「齊魏を伐たんと欲す、能く魏の患いを解く者は、唯だ先生のみなり。敝邑宝璧二双、文馬二駟有り、請う之を先生に致さん」と。淳于髡曰く、「諾」と。入りて齊王に説きて曰く、「楚は、齊の仇敵なり。魏は、齊の与国なり。夫れ与国を伐ちて、仇敵をして其の敝を制せしむるは、名醜くして実危うし、王の為に取らざるなり」と。齊王曰く、「善し」と。乃ち魏を伐たず。客齊王に謂いて曰く、「淳于髡魏を伐たずと言う者は、魏の璧・馬を受ければなり」と。王以て淳于髡に謂いて曰く、「先生魏の璧・馬を受くと聞く、諸(これ)有りや」と。曰く、「之有り」と。「然らば則ち先生の寡人の為に之を計るは何如(いかん)ぞ」と。淳于髡曰く、「魏を伐つの事便ならず、魏髡を刺すと雖も、王に於いて何の益あらん。若し誠に便ならずんば、魏髡を封ずと雖も、王に於いて何の損あらん。且つ夫れ王与国を伐つの誹り無く、魏亡ぼさるるを見るの危うき無く、百姓兵を被るの患い無く、髡璧・馬の宝有り、王に於いて何ぞ傷まんや」と。