淮南子 / 主術訓
夫目妄視則淫,耳妄聽則惑,口妄言則亂。夫三關者,不可不慎守也。若欲規之,乃是離之;若欲飾之,乃是賊之。天氣為魂,地氣為魄,反之玄房,各處其宅,守而勿失,上通太一。太一之精,通于天道,天道玄默,無容無則,大不可極,深不可測,尚與人化,知不能得。昔者神農之治天下也,神不馳於胸中,智不出於四域,懷其仁誠之心。甘雨時降,五穀蕃植,春生夏長,秋收冬藏。月省時考,歲終獻功,以時嘗谷,祀於明堂。明堂之制,有蓋而無四方,風雨不能襲,寒暑不能傷,遷延而入之,養民以公。其民樸重端愨,不紛爭而財足,不勞形而功成。因天地之資而與之和同,是故威厲而不殺,刑錯而不用,法省而不煩。故其化如神。其地南至交阯,北至幽都,東至暘穀,西至三危,莫不聽從。當此之時,法寬刑緩,囹圄空虛,而天下一俗,莫懷奸心。
新字:夫目妄視則淫,耳妄聴則惑,口妄言則乱。夫三関者,不可不慎守也。若欲規之,乃是離之;若欲飾之,乃是賊之。天気為魂,地気為魄,反之玄房,各処其宅,守而勿失,上通太一。太一之精,通于天道,天道玄黙,無容無則,大不可極,深不可測,尚与人化,知不能得。昔者神農之治天下也,神不馳於胸中,智不出於四域,懐其仁誠之心。甘雨時降,五穀蕃植,春生夏長,秋収冬蔵。月省時考,歳終献功,以時嘗谷,祀於明堂。明堂之制,有蓋而無四方,風雨不能襲,寒暑不能傷,遷延而入之,養民以公。其民樸重端愨,不紛争而財足,不労形而功成。因天地之資而与之和同,是故威厲而不殺,刑錯而不用,法省而不煩。故其化如神。其地南至交阯,北至幽都,東至暘穀,西至三危,莫不聴従。当此之時,法寛刑緩,囹圄空虚,而天下一俗,莫懐奸心。
書き下し
夫れ目 妄りに視れば則ち淫し、耳 妄りに聽けば則ち惑い、口 妄りに言えば則ち亂る。夫れ三關なる者は、慎みて守らざる可からざるなり。若し之を規らんと欲すれば、乃ち是れ之を離すなり。若し之を飾らんと欲すれば、乃ち是れ之を賊うなり。天氣は魂と為り、地氣は魄と為る。之を玄房に反し、各々其の宅に處り、守りて失う勿くんば、上は太一に通ず。太一の精は、天道に通ず。天道は玄默にして、容無く則無く、大にして極む可からず、深くして測る可からず。尚お人と化するも、知 得る能わず。昔者 神農の天下を治むるや、神は胸中に馳せず、智は四域に出でず、其の仁誠の心を懷く。甘雨 時に降り、五穀 蕃植し、春に生じ夏に長じ、秋に收め冬に藏す。月ごとに省み時ごとに考え、歲終わりに功を獻じ、時を以て穀を嘗め、明堂に祀る。明堂の制、蓋有りて四方無く、風雨も襲う能わず、寒暑も傷なう能わず、遷延して之に入り、民を養うに公を以てす。其の民 樸重端愨にして、紛爭せずして財足り、形を勞せずして功成る。天地の資に因りて之と和同す。是の故に威 厲しくして殺さず、刑 錯きて用いず、法 省にして煩わしからず。故に其の化 神のごとし。其の地 南は交阯に至り、北は幽都に至り、東は暘穀に至り、西は三危に至るまで、聽從せざる莫し。此の時に當たりて、法 寬く刑 緩く、囹圄 空虛にして、天下 俗を一にし、奸心を懷く莫し。
現代語訳
目がむやみに見れば溺れ、耳がむやみに聞けば惑い、口がむやみに言えば乱れる。この三つの関門は、慎んで守らなければならない。もしそれを取り締まろうとすれば、かえって離れてしまう。もしそれを飾ろうとすれば、かえって損なう。天の気は魂となり、地の気は魄となる。それを奥の部屋に返し、それぞれの住まいに置き、守って失わなければ、上は太一に通じる。太一の精は天の道に通じる。天の道は奥深く黙っていて、かたちもなく決まりもなく、大きくて極められず、深くて測れない。それでいて人とともに変化するが、知ではとらえられない。昔、神農が天下を治めたとき、心は胸の中を走り回らず、知恵は四方の外へ出ず、仁と誠の心を抱いていた。恵みの雨は時に降り、五穀は茂り、春に生じ夏に育ち、秋に収め冬に蔵した。月ごとに省み季節ごとに考え、年の終わりに成果を献じ、時に応じて穀を味わい、明堂で祀った。明堂の造りは、屋根はあっても四方の壁がなく、風雨も入り込めず、寒暑も傷めず、ゆったりと入って、公をもって民を養った。その民は素朴で慎み深く、争わずに財が足り、体を疲れさせずに事が成った。天地の恵みに従ってそれと和した。だから威は厳しくても殺さず、刑は置かれても使われず、法は簡略で煩わしくない。だからその感化は神のようであった。その地は南は交阯、北は幽都、東は暘谷、西は三危に至るまで、従わないものはなかった。このときには、法は寛く刑は緩く、牢は空で、天下は風俗を一つにし、悪心を抱く者はなかった。
解説
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