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武士道 / 第八章 名譽・少年の欲する所は名聞

武夫多くは屈辱に忍ぶ能はず、直ちに憤を發し徃々死を以て之に報ずることありたり。而して名譽――而も往々虛名、世譽たるに過ぎざるものも、此輩尙ほ之を崇めて人生至大の賜なりとせり。盖し少年の欲する所は專ら名聞に在りて、富にも非らず、智にもあらず。

新字:武夫多くは屈辱に忍ぶ能はず、直ちに憤を発し往々死を以て之に報ずることありたり。而して名誉――而も往々虚名、世誉たるに過ぎざるものも、此輩尚ほ之を崇めて人生至大の賜なりとせり。盖し少年の欲する所は専ら名聞に在りて、富にも非らず、智にもあらず。

書き下し

武夫多くは屈辱に忍ぶ能はず、直ちに憤を発し、往々死を以て之に報ずることありたり。而して名誉――而も往々虚名、世誉たるに過ぎざるものも、此輩なほ之を崇めて人生至大の賜なりとせり。けだし少年の欲する所は専ら名聞に在りて、富にも非らず、智にもあらず。

現代語訳

武士の多くは屈辱に耐えることができず、すぐに憤りを発して、しばしば死をもってそれに報いることがあった。そして名誉――しかもしばしば中身のない評判や世間のほまれにすぎないものでさえ――この人々はなおそれを崇めて、人生で最大の賜物とした。思うに、少年が求めたのはもっぱら名声であって、富でもなく、知恵でもなかった。

解説

前段で孟子の教えを学んでも忘れてしまう若い武士の姿が描かれ、この短い段はその結果を示します。屈辱に耐えられず、すぐに怒って、ときには死をもって報いた。しかも守ろうとした名誉は、しばしば中身のない評判にすぎなかった、と新渡戸ははっきり書いています。武士道を称える本が負の面を隠していない点に注意したい箇所です。一方で、少年が求めたのは富でも知恵でもなく名声だった、という一文には、金銭よりも名を重んじる価値観が良くも悪くも若者を動かしていたという観察が込められています。名誉の感覚は人を高くもし、短慮にもするという両面が、この章全体の主題になっています。あなたが今いちばん欲しいものは、富ですか、知恵ですか、それとも人からの評価ですか。

この章句が説くこと

名誉虚名屈辱名声短慮

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