墨子 / 非命下
今也卿大夫之所以竭股肱之力,殫其思慮之知,内治官府,外斂關市、山林、澤梁之利,以實官府,而不敢怠倦者,何也?曰:彼以為强必貴,不强必賤,强必榮,不强必辱,故不敢怠倦。今也農夫之所以蚤出暮入,强乎耕稼樹藝,多聚升粟,而不敢怠倦者,何也?曰:彼以為强必富,不强必貧,强必飽,不强必饑,故不敢怠倦。今也婦人之所以夙興夜寐,强乎紡績織絍,多治麻統葛緒,捆布縿,而不敢怠倦者,何也?曰:彼以為强必富,不强必貧,强必煖,不强必寒,故不敢怠倦。
新字:今也卿大夫之所以竭股肱之力,殫其思慮之知,内治官府,外斂関市、山林、沢梁之利,以実官府,而不敢怠倦者,何也?曰:彼以為强必貴,不强必賤,强必栄,不强必辱,故不敢怠倦。今也農夫之所以蚤出暮入,强乎耕稼樹芸,多聚升粟,而不敢怠倦者,何也?曰:彼以為强必富,不强必貧,强必飽,不强必饑,故不敢怠倦。今也婦人之所以夙興夜寐,强乎紡績織絍,多治麻統葛緒,捆布縿,而不敢怠倦者,何也?曰:彼以為强必富,不强必貧,强必煖,不强必寒,故不敢怠倦。
書き下し
今や卿大夫の股肱の力を竭くし、其の思慮の知を殫くし、内は官府を治め、外は關市・山林・澤梁の利を斂め、以て官府を實たして、敢えて怠倦せざる所以の者は、何ぞや。曰く、彼れ以為えらく强ければ必ず貴く、强からざれば必ず賤しく、强ければ必ず榮え、强からざれば必ず辱めらると。故に敢えて怠倦せず。今や農夫の蚤く出で暮に入り、耕稼樹藝に强め、多く升粟を聚めて、敢えて怠倦せざる所以の者は、何ぞや。曰く、彼れ以為えらく强ければ必ず富み、强からざれば必ず貧しく、强ければ必ず飽き、强からざれば必ず饑うと。故に敢えて怠倦せず。今や婦人の夙に興き夜に寐ね、紡績織絍に强め、多く麻統葛緒を治め、布縿を捆ちて、敢えて怠倦せざる所以の者は、何ぞや。曰く、彼れ以為えらく强ければ必ず富み、强からざれば必ず貧しく、强ければ必ず煖かく、强からざれば必ず寒しと。故に敢えて怠倦せず。
現代語訳
いま卿大夫が手足の力を尽くし、思慮の知を尽くし、内は役所を治め、外は関所や市場、山林、沼沢の利を集めて役所を満たし、怠らないのはなぜか。彼はこう考えている。努めれば必ず貴くなり、努めなければ必ず賤しくなる。努めれば必ず栄え、努めなければ必ず辱められる。だから怠らない。いま農夫が朝早く出て日暮れに帰り、耕作と植え付けに努め、多くの穀物を集めて怠らないのはなぜか。彼はこう考えている。努めれば必ず富み、努めなければ必ず貧しくなる。努めれば必ず腹が満ち、努めなければ必ず飢える。だから怠らない。いま女が朝早く起き夜遅く寝て、糸を紡ぎ布を織ることに努め、麻や絹や葛を多く扱い布を打って怠らないのはなぜか。こう考えている。努めれば必ず富み、努めなければ必ず貧しくなる。努めれば必ず暖かく、努めなければ必ず寒い。だから怠らない。
解説
この章句が説くこと
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『墨子』非命下然るに今、命を以て有りと為す者あり。昔、三代の暴王、桀・紂・幽・厲は、貴きこと天子と為り、富は天下を有つ。此に於いてか其の耳目の欲を矯めずして、其の心意の辟に従い、外は之れ田獵畢弋に騁せ、内は酒樂に湛り、而して其の國家百姓の政を顧みず。繁く無用を為し、百姓を暴逆し、遂に其の宗廟を失う。其の言に「吾れ罷れ不肖にして、吾が聴治、强からず」と曰わず、必ず「吾が命、固より将に之を失わんとす」と曰う。昔の三代の罷れ不肖の民と雖も、亦た猶お此くのごときなり。善く親戚君長に事うる能わず、甚だ恭儉を惡みて簡易を好み、飲食を貪りて從事に惰り、衣食の財、足らず、是を以て身、饑寒凍餒の憂いに陷る。其の言に「吾れ罷れ不肖にして、吾が従事、强からず」と曰わず、必ず「吾が命、固より将に窮せんとす」と曰う。昔の三代の偽民も、亦た猶お此くのごときなり。