墨子 / 節用中
古者聖王制為飲食之法曰:「足以充虚繼氣,强股肱,耳目聰明,則止。」不極五味之調、芬香之和,不致逺國珍恢異物。何以知其然?古者堯治天下,南撫交趾北降幽都,東西至日所出入,莫不賓服,建至其厚愛,黍稷不二,羮胾不重,飲於土㙧啜於土硎斗以酌。俛仰周旋威儀之禮,聖王弗為。
新字:古者聖王制為飲食之法曰:「足以充虚継気,强股肱,耳目聰明,則止。」不極五味之調、芬香之和,不致遠国珍恢異物。何以知其然?古者堯治天下,南撫交趾北降幽都,東西至日所出入,莫不賓服,建至其厚愛,黍稷不二,羹胾不重,飲於土㙧啜於土硎斗以酌。俛仰周旋威儀之礼,聖王弗為。
書き下し
古者、聖王、制して飲食の法を為りて曰く、「虚を充たし氣を繼ぎ、股肱を强くし、耳目を聰明にするに足れば、則ち止む」と。五味の調え、芬香の和を極めず、逺國の珍恢異物を致さず。何を以て其の然るを知るや。古者、堯、天下を治むるや、南は交趾を撫し、北は幽都を降し、東西は日の出入する所に至るまで、賓服せざる莫し。其の厚愛に至るを建つるも、黍稷は二にせず、羮胾は重ねず、土㙧に飲み、土硎に啜り、斗以て酌む。俛仰周旋、威儀の禮は、聖王、為さず。
現代語訳
むかし聖王は飲食の法を定めてこう言った。「空腹を満たし気を保ち、手足を強くし、耳目を明晰にするに足りれば、そこで止める」。五つの味の調和や香りの取り合わせを極めず、遠い国の珍しい品や変わった物を取り寄せない。なぜそう分かるのか。むかし堯が天下を治めたとき、南は交趾をなだめ、北は幽都を従え、東西は日の出没するところまで、従わない者はなかった。それほど厚く慕われながら、主食の穀物を二種類並べず、汁物と肉を重ねず、土の器で飲み、土の椀ですすり、柄杓で酌んだ。立ち居振る舞いや儀礼の作法を、聖王は行わなかった。
解説
飲食の基準も、目的から逆算されます——空腹を満たし、気を保ち、手足を強くし、耳目を明晰にする。四つの機能に足りれば止める。そのうえで堯の実例が置かれます。天下を統べながら、穀物は一種類、汁と肉を重ねず、器は土。地位と生活水準を切り離した例として引かれています。トップの生活水準が組織のコスト意識を規定するという、辭過篇と同じ論点がここでも繰り返されます。
この章句が説くこと
飲食機能止める実例生活水準
関連する章句
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『墨子』辭過古の民、未だ飲食を為るを知らざる時、素食して分れ處る。故に聖人、作りて男に耕稼樹藝を誨えて、以て民の食を為らしむ。其の食を為るや、以て氣を増し虚を充たし、體を彊くし腹に適うに足るのみ。故に其の財を用うること節にして、其の自ら養うこと儉なれば、民富み國治まる。今は則ち然らず。厚く百姓に作斂して、以て美食・芻豢・蒸炙・魚鼈を為り、大國は百器を累ね、小國は十器を累ね、前は方丈にして、目は徧く視る能わず、手は徧く操る能わず、口は徧く味わう能わず。夏は則ち冰を設け、冬は則ち饐を飾る。人君の飲食を為すこと此くの如し。故に左右之に象る。是を以て富貴なる者は奢侈にして、孤寡なる者は凍餒す。亂無からんと欲するも、得可からざるなり。君、實に天下の治を欲して其の亂を惡まば、當に飲食を為すは節せざる可からず。
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『墨子』辭過古の民、未だ衣服を為るを知らざる時、皮を衣、茭を帶び、冬は則ち輕からずして温かならず、夏は則ち輕からずして凊しからず。聖王、以て人の情に中らずと為す。故に婦人に誨えて絲麻を治め役し、布絹を捆ちて、以て民の衣を為らしむ。衣服を為るの法は、冬夏には則ち練帛の飾り、以て温かにして且つ清きを為すに足り、謹んで此に止まる。故に聖人の衣服を為るは、身體に適い肌膚に和して足れりとし、耳目を榮えしめて愚民に觀せしむるに非ざるなり。是の時に當たりて、堅車良馬も貴ぶを知らざるなり、刻鏤文采も喜ぶを知らざるなり。何となれば則ち、其の道く所、然らしむればなり。故に民の衣食の財、家、以て旱水凶饑を待つに足る者は、何ぞや。其の自ら養う所以の情を得て、外に感ぜざればなり。是を以て其の民は儉にして治め易く、其の君は財を用うること節にして贍らし易きなり。府庫は實ち滿ち、以て不然を待つに足る。兵革は頓れず、士民は勞れず、以て不服を征するに足る。故に霸王の業、天下に行う可し。
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『墨子』節用中古者、聖王、制して衣服の法を為りて曰く、「冬は紺緅の衣を服て輕くして且つ暖かく、夏は絺綌の衣を服て輕くして且つ凊しければ、則ち諸を止む」と。費を加えて民の利に加えざる者は、聖王、為さず。
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『墨子』辭過子墨子曰く、古の民、未だ宫を為るを知らざる時、陵阜に就きて以て居り、穴して處る。下、潤濕にして民を傷る。故に聖王、作りて宫室を為る。宫室を為るの法に曰く、髙さは以て潤濕を辟くるに足り、邊は以て風寒を圉ぐに足り、上は以て雪霜雨露を待つに足り、宫牆の髙さは、以て男女の禮を别つに足る。謹んで此に止まり、財を費やし力を勞して利を加えざる者は、為さざるなり。是の故に聖王の宫室を作り為るは、生に使するにして、以て觀樂を為さざるなり。衣服・帯履を作り為るは、身に便なるにして、以て辟怪を為さざるなり。故に身に節し、民に誨う。是を以て天下の民、得て治む可く、財用、得て足る可し。今の主に當たりては、其の宫室を為るや則ち此と異なれり。必ず厚く百姓に作斂し、暴かに民の衣食の財を奪いて、以て宫室・臺榭・曲直の望、青黄刻鏤の飾りを為る。宫室を為ること此くの若し。故に左右皆な之に法象す。是を以て其の財、以て凶饑を待ち孤寡を賑わすに足らず。故に國貧しくして民治め難きなり。君、實に天下の治を欲して其の亂を惡まば、當に宫室を為るは節せざる可からず。
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『墨子』節用中子墨子言いて曰く、古者、明王聖人の天下に王たり諸侯を正しくせし所以の者は、彼れ其れ民を愛すること謹みて忠、民を利すること謹みて厚く、忠信、相い連なり、又た之に示すに利を以てす。是を以て身を終うるまで饜かず、殁して二十にして卷まず。古者、明王聖人の其の天下に王たり諸侯を正しくせし所以の者は、此れなり。
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