師導古典を学びたいすべての人に

牧民忠告 / 閑居

名節之於人,不金幣而富,不軒冤而貴。士無名節,猶女不貞,則何暴不從,何美不附?雖有他美,亦不足贖也。故前輩謂爵祿易得,名節難保。爵祿或失,有時而再來;名節一虧,終身不復矣。嗚呼,士而居賢者,能以此言銘其心,庶不易所守而趨勢要哉!

新字:名節之於人,不金幣而富,不軒冤而貴。士無名節,猶女不貞,則何暴不従,何美不附?雖有他美,亦不足贖也。故前輩謂爵禄易得,名節難保。爵禄或失,有時而再来;名節一虧,終身不復矣。嗚呼,士而居賢者,能以此言銘其心,庶不易所守而趨勢要哉!

書き下し

名節の人に於けるや、金幣ならずして富み、軒冤ならずして貴し。士に名節無きは、猶お女の貞ならざるがごとし。則ち何の暴にか従わざらん、何の美にか附かざらん。他美有りと雖も、亦た贖(あがな)うに足らざるなり。故に前輩謂う、「爵禄は得易く、名節は保ち難し」と。爵禄或いは失うも、時有りて再び来たる。名節一たび虧(か)くれば、終身復さず。嗚呼、士にして賢に居る者、能く此の言を以て其の心に銘ぜば、庶(ちか)くは守る所を易(か)えずして勢要(せいよう)に趨(はし)らざらんか。

現代語訳

名誉と節操というものは、人にとって、金銭がなくても富であり、高位の車や冠がなくても貴さである。士に名節がないのは、ちょうど女に貞節がないようなもので、そうなればどんな乱暴にも従い、どんな美辞麗句にもなびいてしまう。たとえ他に美点があったとしても、それで償うことはできない。だから先輩たちは「爵位や俸禄は得やすいが、名節は保ちがたい」と言った。爵位や俸禄は、たとえ失っても、時が経てば再び得られることがある。しかし名節は、一度でも損なわれれば、生涯二度と回復しない。ああ、士でありながら賢者の地位にある者が、この言葉を心に刻むことができれば、おそらく自分の守るべきものを変えず、権勢や利権に走ることもないだろう。

解説

本条は、名節(名誉と節操)を人の貴さの根源と位置づけ、当時の比喩を用いて、一度失えば取り返しがつかないと説く。爵位や俸禄は失っても再び得る機会があるが、名節は一度損なえば生涯回復しないという対比が本条の要である。当時の価値観に基づく比喩ではあるが、地位や財産といった外的なものと、信頼や誠実さといった内面的なものとの回復可能性の違いを鋭く指摘している点は今日にも通じる。現代の組織においても、一度の不正や裏切りで失った信用は、地位や実績を再び積んでも簡単には取り戻せない。目先の権勢や利益になびかず、自らの節操を守り抜く覚悟が問われている。

この章句が説くこと

風節名節爵禄信頼

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる