酔古堂剣掃 / 集豪・人を殺し得る者方に能く人を生かす
殺得人者,方能生人。有恩者,必然有怨。若使不陰不陽,隨世披靡,肉菩薩出世,於世何補?此生何用?
新字:殺得人者,方能生人。有恩者,必然有怨。若使不陰不陽,随世披靡,肉菩薩出世,於世何補?此生何用?
書き下し
人を殺し得る者にして、方に能く人を生かす。恩有る者は、必然として怨み有り。若し陰ならず陽ならず、世に隨ひて披靡し、肉菩薩の世に出づるが如くならしめば、世に於て何をか補はん。此の生何をか用ひん。
現代語訳
人を殺すことのできる者こそが、人を生かすこともできます。恩を施す者には、必ず恨みも生じます。もし陰でも陽でもなく、世の流れに従ってなびき伏し、肉でできた菩薩のように誰にでも優しいだけの人間として世に出たとしたら、世の中に何の役に立つでしょうか。この一生を何に用いるというのでしょうか。
解説
誰にも嫌われない生き方を痛烈に批判した一則です。人を殺し得る者方に人を生かすとは、厳しい決断ができる者だけが、本当に人を救えるという意味です。恩を施せば、受けられなかった者から必ず恨まれるとも言います。披靡は風になびき伏すこと、肉菩薩は情にもろく誰にでも優しいだけの人を皮肉った言い方です。はっきりした態度を取らず、ただ世に流される人は、何の役にも立たないと断じています。組織の中でも、嫌われることを恐れて決めるべきことを決めないのは、かえって多くの人を困らせることになります。
この章句が説くこと
決断胆力処世豪気責任
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