尚書 / 舜典
肇十有二州,封十有二山,濬川。象以典刑,流宥五刑,鞭作官刑,扑作教刑,金作贖刑。眚災肆赦,怙終賊刑。
書き下し
十有二州を肇(はじ)め、十有二山を封じ、川を濬(ふか)くす。象(しめ)すに典刑を以てし、流して五刑を宥(ゆる)し、鞭は官刑と作(な)し、扑(ぼく)は教刑と作し、金は贖刑と作す。眚災(せいさい)は肆(ゆる)し赦し、怙終(こしゆう)は賊刑す。
現代語訳
(舜は)はじめて天下を十二の州に分け、十二の山を州の鎮めとして祭り、川を深く掘った。常の刑罰を示して民に知らせ、流刑によって五刑(入れ墨・鼻切り・足切り・宮刑・死刑)をゆるめ、鞭は役人を罰する刑とし、むちは教えに従わない者を罰する刑とし、金は罪をあがなう刑とした。過失や不運による罪は許し、罪を頼んで改めない者は死刑とした。
解説
舜が天下の区画と刑罰の制度を整えた一節である。天下を十二の州に分けて山を鎮めとし、刑罰については、あらかじめ定まった刑を示して民に知らせ、流刑によって重い肉刑をゆるめ、役人への鞭打ち、教化のためのむち打ち、金銭による贖いと、罪に応じた段階を設けた。とくに「眚災は肆し赦し、怙終は賊刑す」は、過失や不運による罪は許し、罪を頼んで改めない者は重く罰するという区別を示し、動機を重んじる中国の刑罰思想の原点とされる。罰の基準を前もって示し、うっかりの失敗と確信的な不正とを分けて扱うことは、今の組織の規律にもそのまま当てはまる。基準が見えない罰は人を萎縮させ、区別のない罰は不公平を生む。
関連する章句
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史記 五帝本紀正月上日、舜終を文祖に受く。文祖は、堯の大祖なり。是に於て帝堯老い、舜に命じて天子の政を摂行せしめ、以て天命を観る。舜乃ち璿璣玉衡を在て、以て七政を斉ふ。遂に上帝に類し、六宗に禋し、山川に望し、羣神に辯す。五瑞を揖め、吉月日を択び、四嶽・諸牧に見え、瑞を班つ。歳の二月、東に巡狩し、岱宗に至り、祡し、山川に望秩す。遂に東方の君長に見え、時月を合はせ日を正し、律度量衡を同じくし、五礼・五玉・三帛・二生・一死を脩めて摯と為し、五器の如きは、卒へて乃ち復す。五月、南に巡狩し、八月、西に巡狩し、十一月、北に巡狩す。皆初めの如し。帰りて、祖禰の廟に至り、特牛の礼を用ゐる。五歳に一たび巡狩し、羣后は四たび朝す。徧く告ぐるに言を以てし、明らかに試みるに功を以てし、車服は庸を以てす。肇めて十有二州とし、川を決す。象るに典刑を以てし、流して五刑を宥し、鞭を官刑と作し、扑を教刑と作し、金を贖刑と作す。眚烖の過は赦し、怙終の賊は刑す。欽しめや、欽しめや、惟れ刑を之れ静かにせよ。讙兜共工を進言し、堯曰く不可なりと。而して之を工師に試みるに、共工果たして淫辟なり。四嶽鯀を挙げて鴻水を治めしめんとし、堯以て不可と為すも、嶽彊ひて之を試みんことを請ふ。之を試みて功無く、故に百姓便ならず。三苗江淮・荊州に在りて数乱を為す。是に於て舜帰りて帝に言ひ、共工を幽陵に流して、以て北狄を変ぜしめ、驩兜を崇山に放ちて、以て南蛮を変ぜしめ、三苗を三危に遷して、以て西戎を変ぜしめ、鯀を羽山に殛して、以て東夷を変ぜしめんことを請ふ。四辠して天下咸服す。堯立ちて七十年にして舜を得、二十年にして老い、舜をして天子の政を摂行せしめ、之を天に薦む。堯位を辟くること凡そ二十八年にして崩ず。百姓悲哀し、父母を喪ふが如し。三年、四方楽を挙ぐる莫く、以て堯を思ふ。
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尚書・呂刑王曰く、「吁(ああ)!来たれ、有邦有土よ、爾に祥刑を告ぐ。今に在りて爾百姓を安んずるに、何をか択ぶ、人に非ずや。何をか敬む、刑に非ずや。何をか度る、及に非ずや。両造具備すれば、師五辞を聴く。五辞簡孚なれば、五刑に正す。五刑簡ならざれば、五罰に正す。五罰服せざれば、五過に正す。五過の疵は、惟れ官、惟れ反、惟れ内、惟れ貨、惟れ来なり。其の罪惟れ均し、其れ審らかに之を克くせよ。五刑の疑はしきは赦す有り、五罰の疑はしきは赦す有り、其れ審らかに之を克くせよ。簡孚衆有るも、惟れ貌に稽ふる有り。簡無ければ聴かず、具に天威を厳れよ。墨辟の疑はしきは赦し、其の罰百鍰、其の罪を閲実せよ。劓辟の疑はしきは赦し、其の罰惟れ倍、其の罪を閲実せよ。剕辟の疑はしきは赦し、其の罰倍差、其の罪を閲実せよ。宮辟の疑はしきは赦し、其の罰六百鍰、其の罪を閲実せよ。大辟の疑はしきは赦し、其の罰千鍰、其の罪を閲実せよ。墨罰の属千、劓罰の属千、剕罰の属五百、宮罰の属三百、大辟の罰、其の属二百。五刑の属三千。上下罪を比し、僭乱の辞無かれ。行はれざるを用ふる勿く、惟れ察し惟れ法とし、其れ審らかに之を克くせよ。上刑も適に軽ければ、下に服す。下刑も適に重ければ、上に服す。軽重の諸罰に権有り。
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尚書・呂刑惟れ呂の命。王国を享くること百年、耄いて、荒いに度りて刑を作り、以て四方を詰す。王曰く、「古の訓有るが若し、蚩尤惟れ始めて乱を作し、平民に延及し、寇賊せざる罔く、鴟義姦宄、奪攘矯虔す。苗民は霊を用ひず、制するに刑を以てし、惟れ五虐の刑を作りて法と曰ひ、無辜を殺戮す。爰に始めて淫りに劓・刵・椓・黥を為し、越に茲れ刑に麗るもの并せて制し、辞有るを差ぶ罔し。民興りて胥漸(ひた)り、泯泯棼棼として、信に中る罔く、以て詛盟を覆す。虐威の庶戮、方く無辜を上に告ぐ。上帝民を監るに、馨香の徳有る罔く、刑の発して聞こゆるは惟れ腥し。皇帝庶戮の不辜を哀矜し、虐に報ゆるに威を以てし、苗民を遏絶し、世々下に在ること無からしむ。乃ち重・黎に命じて、地天の通ずるを絶ち、降格有る罔からしむ。群后の逮びて下に在るもの、明明として常を棐け、鰥寡蓋はるること無し。帝清く下民に問ふに、苗に辞有り。徳の威は惟れ畏れ、徳の明は惟れ明らかなり。乃ち三后に命じて、功を民に恤ましむ。伯夷は典を降し、民を折むるに惟れ刑を以てす。禹は水土を平らげ、山川に主名す。稷は播種を降し、農は嘉穀を殖す。三后功を成し、惟れ民を殷んにす。士は百姓を刑の中に制し、以て祗徳を教ふ。穆穆として上に在り、明明として下に在り、四方に灼き、徳に之れ勤めざる罔し。故に乃ち刑の中に明らかにし、民を率ゐ乂めて彝を棐く。典獄は威に訖るに非ず、惟れ富に訖るにも非ず。敬忌して、択言の身に在る有る罔し。惟れ克く天徳ありて、自ら元命を作し、配して下に享く。」王曰く、「嗟(ああ)!四方の司政典獄よ。爾惟れ天牧と作るに非ずや。今爾何をか監みる、時の伯夷の刑を播くの迪に非ずや。其れ今爾何をか懲らす。惟れ時の苗民、獄の麗を察せず、吉人を択びて五刑の中を観る罔く、惟れ時の庶威貨を奪ひ、五刑を断制し、以て無辜を乱す。上帝蠲さず、咎を苗に降す。苗民罰に辞無く、乃ち厥の世を絶つ。」王曰く、「嗚呼(ああ)!之を念へや。
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尚書・舜典共工を幽洲に流し、驩兜(くわんとう)を崇山に放ち、三苗を三危に竄(のが)し、鯀(こん)を羽山に殛(ころ)す。四罪して天下咸(みな)服す。二十有八載、帝乃ち殂落(そらく)す。百姓考妣(かうひ)を喪(うしな)ふが如く、三載、四海八音を遏密(あつみつ)す。月正元日、舜文祖に格(いた)り、
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尚書・大禹謨民中に協(かな)ふ、時(こ)れ乃(なんぢ)の功なり。懋(つと)めんかな」と。皐陶曰く、「帝の徳愆(あやま)つ罔(な)し。下に臨むに簡を以てし、衆を御するに寛を以てす。罰は嗣(し)に及ばず、賞は世に延(ひ)く。過(あやま)ちを宥(ゆる)すに大無く、故(ことさら)を刑するに小無し。
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尚書・舜典「咨(ああ)、十有二牧」と。曰く、「食なるかな、惟れ時(これ)。遠きを柔(やす)んじ邇(ちか)きを能(をさ)め、徳を惇(あつ)くし元を允(まこと)にし、而して任人を難(しりぞ)くれば、蛮夷率(したが)ひ服せん」と。舜曰く、「咨、四岳。能く庸(こう)を奮ひて帝の載(こと)を熙(ひろ)め、百揆に宅(を)りて采(こと)を亮(たす)け、疇(たぐひ)を恵(したが)へしむる有らんか」と。僉(みな)曰く、「伯禹を司空と作(な)さん」と。帝曰く、「俞(しか)り。咨、禹、汝水土を平らかにせよ。惟れ時(これ)懋(つと)めんかな」と。禹拝して稽首し、稷・契暨(およ)び皐陶に譲る。帝曰く、「俞り、汝往かんかな」と。帝曰く、「棄よ、黎民阻飢(そき)す。汝后稷として、時(こ)の百穀を播(ま)け」と。帝曰く、「契よ、百姓親しまず、五品遜(したが)はず。汝司徒と作りて、敬みて五教を敷け。寛に在り」と。帝曰く、「皐陶よ、蛮夷夏を猾(みだ)し、寇賊姦宄(かんき)す。汝士と作れ。五刑服する有り、五服は三就す。五流宅する有り、五宅は三居す。惟れ明らかにして克く允(まこと)にせよ」と。帝曰く、「疇(たれ)か予が工に若(したが)はん」と。僉曰く、「垂(すい)なるかな」と。帝曰く、「俞り。咨、垂、汝共工たれ」と。垂拝して稽首し、殳斨(しゆしやう)暨び伯与に譲る。帝曰く、「俞り、往かんかな。汝諧(かな)へり」と。帝曰く、「疇か予が上下の草木鳥獣に若はん」と。僉曰く、「益なるかな」と。帝曰く、「俞り。咨、益、汝朕が虞と作れ」と。益拝して稽首し、朱虎・熊羆(ゆうひ)に譲る。帝曰く、「俞り、往かんかな。汝諧へり」と。帝曰く、「咨、四岳。能く朕が三礼を典(つかさど)る有らんか」と。僉曰く、「伯夷」と。帝曰く、「俞り。咨、伯、汝秩宗と作れ。夙夜惟れ寅(つつし)み、直なるかな惟れ清し」と。伯拝して稽首し、夔(き)・竜に譲る。帝曰く、「俞り、往け、欽まんかな」と。帝曰く、「夔よ、汝に命じて楽を典り、冑子(ちうし)を教へしむ。
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