商君書 / 徠民
且周軍之勝、華軍之勝、長平之勝、秦所亡民者幾何、民客之兵不得事本者幾何、臣竊以為不可數矣。假使王之群臣、有能用之、費此之半、弱晉強秦、若三戰之勝者、王必加大賞焉。今臣之所言、民無一日之繇、官無數錢之費、其弱晉強秦有過三戰之勝、而王猶以為不可、則臣愚不能知已。
新字:且周軍之勝、華軍之勝、長平之勝、秦所亡民者幾何、民客之兵不得事本者幾何、臣竊以為不可数矣。仮使王之群臣、有能用之、費此之半、弱晉強秦、若三戦之勝者、王必加大賞焉。今臣之所言、民無一日之繇、官無数銭之費、其弱晉強秦有過三戦之勝、而王猶以為不可、則臣愚不能知已。
書き下し
且つ周軍の勝、華軍の勝、長平の勝、秦の民を亡う所の者は幾何ぞ、民客の兵にして本を事とするを得ざる者は幾何ぞ。臣竊かに以て數うべからずと為すなり。假使し王の群臣に、能くこれを用うる有りて、此れの半ばを費やして、晉を弱め秦を強くすること、三戰の勝の若き者あらば、王は必ず大賞を加えん。今、臣の言う所は、民に一日の繇無く、官に數錢の費無くして、その晉を弱め秦を強くすること三戰の勝に過ぐる有り。而るに王は猶お以て不可と為さば、則ち臣愚にして知る能わざるのみ。
現代語訳
それに、周軍の勝利、華陽の勝利、長平の勝利で、秦が失った民はどれほどか。民や寄留者で兵に取られて生産に従事できなかった者はどれほどか。私はひそかに、数えきれないと思う。もし王の臣下の中に、これを行える者がいて、その半分の費用で晋を弱め秦を強くすること、三度の戦勝に匹敵する成果を上げる者があれば、王は必ず大きな賞を与えられるだろう。いま私が申し上げているのは、民に一日の労役もなく、官庁に数銭の出費もなくて、しかも晋を弱め秦を強くすることが三度の戦勝を上回るものである。それなのに王が不可とされるなら、私は愚かで理解が及ばないというほかない。
解説
勝った戦いの費用を、こちらの損失として数え直している点が鋭い。長平の勝利さえ、失った民と生産できなかった労働力を数えれば莫大なコストだ、と。勝利は帳簿の片側にしか書かれない。もう一方の側——それを得るために失ったもの——を書き出す人は少ない。そのうえで自分の提案を「民に一日の労役もなく、官に数銭の出費もない」と示す。費用対効果で語るときは、比較対象の費用も正確に数えてはじめて説得力が出る。この段はその手本になっている。
この章句が説くこと
一日の繇無く数銭の費無し長平の勝の費用勝利の裏側を数える費用対効果
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