商君書 / 徠民
夫秦之所患者、興兵而伐、則國家貧、安居而農、則敵得休息、此王所不能兩成也。故四世戰勝、而天下不服。今以故秦事敵、而使新民作本、兵雖百宿於外、境內不失須臾之時、此富強兩成之效也。
新字:夫秦之所患者、興兵而伐、則国家貧、安居而農、則敵得休息、此王所不能両成也。故四世戦勝、而天下不服。今以故秦事敵、而使新民作本、兵雖百宿於外、境内不失須臾之時、此富強両成之効也。
書き下し
夫れ秦の患うる所の者は、兵を興して伐てば、則ち國家は貧しく、安居して農せば、則ち敵は休息を得。これ王の兩つながら成すこと能わざる所なり。故に四世戰い勝ちて、天下は服せず。今、故秦を以て敵を事とし、而して新民をして本を作さしめば、兵は百たび外に宿すと雖も、境內は須臾の時をも失わず。これ富強兩つながら成るの效なり。
現代語訳
そもそも秦が困っているのは、兵を挙げて討てば国家は貧しくなり、落ち着いて農業をすれば敵に休息を与えてしまう、ということである。これは王が両方同時には成し遂げられないところである。だから四代にわたって戦に勝ちながら、天下は服さなかった。いま、もとからの秦の民を敵に当たらせ、新しく来た民に生産の根本をやらせれば、軍が百日外に宿営していても、国内は一瞬も生産の時を失わない。これが、富と強さを両方同時に成し遂げる効果である。
解説
攻めれば貧しくなり、守れば敵が回復する——同じ人手を戦いと生産のどちらかにしか使えないという制約が、秦の根本問題だった。その打開策が、人手そのものを増やすこと。もとからの民は戦い、新しく来た民は作る。役割を分けることで、二者択一を解消する。事業でも、攻めと守り、新規と既存を同じ人にやらせているかぎり、必ずどちらかが止まる。人を増やすことの本当の価値は作業量ではなく、この二者択一から抜けられることにある。
この章句が説くこと
富強両つながら成る故秦は敵を事とし新民は本を作す二者択一を解く役割の分離
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