商君書 / 農戦
夫農者寡、而遊食者眾、故其國貧危。今夫螟螣蚵蠋春生秋死、一出而民數年乏食。今一人耕、而百人食之、此其為螟螣蚼蠋亦大矣。雖有詩書、鄉一束、家一員、獨無益於治也、非所以反之之術也。故先王反之於農戰。
新字:夫農者寡、而遊食者眾、故其国貧危。今夫螟螣蚵蠋春生秋死、一出而民数年乏食。今一人耕、而百人食之、此其為螟螣蚼蠋亦大矣。雖有詩書、鄉一束、家一員、独無益於治也、非所以反之之術也。故先王反之於農戦。
書き下し
夫れ農する者寡くして、遊食する者眾し、故にその國は貧しく危うし。今夫れ螟螣蚵蠋は春に生じ秋に死す、一たび出づれば民は數年食に乏し。今一人耕して、百人これを食らう、これその螟螣蚼蠋為ること亦た大なり。詩書有りと雖も、鄉に一束、家に一員あるも、獨り治に益無きなり、これを反すの術に非ざるなり。故に先王はこれを農戰に反す。
現代語訳
農業をする者が少なく、働かずに食べる者が多い。だからその国は貧しく危うい。ところで、稲を食い荒らす虫は春に生まれて秋に死ぬが、ひとたび発生すれば民は数年にわたって食べ物に事欠く。いま一人が耕して百人がそれを食べているとすれば、その害虫ぶりは虫どころではない。詩や書があって、村に一束、家に一巻あったとしても、それだけでは治めるのに何の役にも立たず、この事態を立て直す手立てにはならない。だから先王は、これを農業と戦いに立ち返らせたのである。
解説
働かずに食べる者を害虫にたとえる、商君書でも屈指の激しい一段である。表現は容赦がないが、算術としての指摘は動かせない——一人が耕して百人が食べる構造は、いつか必ず破れる。ここで問われているのは怠け者の道徳ではなく、生産する人と消費する人の比率である。組織でも国でも、この比率が静かに悪化していることは珍しくない。役割が増え、会議が増え、直接つくる人の割合が下がる。詩書があっても立て直せない、という一行は、理念やスローガンでは比率は戻らないという意味に読める。
この章句が説くこと
一人耕して百人これを食らう遊食する者衆し生産と消費の比率螟螣
関連する章句
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『商君書』農戦故に曰く、百人農して一人居る者は王たり、十人農して一人居る者は強し、半ば農し半ば居る者は危うし、と。故に國を治むる者は民の農せんことを欲するなり。國農せざれば、則ち諸侯と權を爭うも自ら持すること能わざるなり、則ち眾力足らざればなり。故に諸侯はその弱きに撓り、その衰うるに乘じ、土地は侵削されて振わざれば、則ち及ぶ無きのみ。聖人は國を治むるの要を知る、故に民をして心を農に歸せしむ。心を農に歸すれば、則ち民は樸にして正すべきなり。紛紛たれば、則ち使い易からず、信なれば、以て守戰すべきなり。壹なれば、則ち軸少なくして居るを重んず、壹なれば、則ち賞罰を以て進むべきなり、壹なれば、則ち以て外に用うべきなり。
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『商君書』農戦故にその民、農する者寡くして、游食する者眾し。眾ければ則ち農する者は怠り、農する者怠れば則ち土地は荒る。學ぶ者俗を成せば、則ち民は農を舍てて、談說に從事し、高言偽議し、農を舍てて游食し、而して言を以て相い高しとす。故に民、上を離れて臣とせざる者、群を成す。これ國を貧しくし兵を弱くするの教えなり。夫れ國、民を庸うに言を以てすれば、則ち民は農に畜えられず。故に惟だ明君のみ言を好むの以て兵を彊くし土を闢くべからざるを知る。惟だ聖人の國を治むるや、壹を作し、これを農に摶むるのみ。
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『商君書』農戦百姓曰く、「我れ農に疾み、先ず公倉を實たし、餘を收めて以て親に事え、上の為に生を忘れて戰い、以て主を尊び國を安んずるなり。倉は虛しく、主は卑しく、家は貧し。然らば則ち官を索むるに如かず」と。親戚交游合すれば、則ち更に慮らん。豪傑は務めて詩書を學び、外權に隨從し、要靡は商賈に事え、技藝を為す。皆な以て農戰を避く。民これを以て教えと為さば、則ち粟焉んぞ少なきこと無きを得ん、而して兵焉んぞ弱きこと無きを得んや。
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