商君書 / 農戦
今為國者多無要。朝廷之言治也、紛紛焉務相易也。是以其君惛於說、其官亂於言、其民惰而不農。故其境內之民、皆化而好辯樂學、事商賈、為技藝、避農戰、如此則亡國不遠矣。國有事、則學民惡法、商民善化、技藝之民不用、故其國易破也。
新字:今為国者多無要。朝廷之言治也、紛紛焉務相易也。是以其君惛於説、其官乱於言、其民惰而不農。故其境内之民、皆化而好弁楽学、事商賈、為技芸、避農戦、如此則亡国不遠矣。国有事、則学民悪法、商民善化、技芸之民不用、故其国易破也。
書き下し
今、國を為むる者は要無きこと多し。朝廷の治を言うや、紛紛焉として相い易うるを務む。是を以てその君は說に惛く、その官は言に亂れ、その民は惰りて農せず。故にその境內の民、皆な化して辯を好み學を樂しみ、商賈に事え、技藝を為し、農戰を避く。此の如くんば則ち亡國遠からず。國に事有れば、則ち學民は法を惡み、商民は化を善くし、技藝の民は用いられず。故にその國破り易きなり。
現代語訳
いま国を治める者には、要点をつかんでいない者が多い。朝廷で政治を論じるときは、めいめいが言い合ってお互いの説を覆すことに終始する。そのため君主は議論に眩まされ、役人は言葉に乱され、民は怠けて農業をしない。だから国じゅうの民がみな染まって、議論を好み学問を楽しみ、商人に仕え、技芸に走り、農業と戦いを避ける。こうなれば国が滅びるまで遠くない。国に事が起これば、学問をした民は法を嫌い、商売をする民はうまく立ち回り、技芸の民は役に立たない。だからその国は破られやすいのだ。
解説
「朝廷の治を言うや、紛紛焉として相い易うるを務む」——会議で交わされているのは政策の検討ではなく、相手の案を覆す作業だ、という描写である。二千三百年前の朝廷も、いまの会議室と同じ光景だったらしい。商鞅の診断は、その議論の多さが上を眩ませ、現場の手を止めるところにある。要点を持たない組織ほど議論が増え、議論が増えるほど誰も動かない。彼の処方(議論そのものを禁じる)は取れないが、症状の見立ては使える。会議が長い組織で失われているのは時間ではなく、何が要点かという合意である。
この章句が説くこと
要無きこと多し紛紛焉会議が覆し合いになる君は説に惛し
関連する章句
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『商君書』農戦故にその民、農する者寡くして、游食する者眾し。眾ければ則ち農する者は怠り、農する者怠れば則ち土地は荒る。學ぶ者俗を成せば、則ち民は農を舍てて、談說に從事し、高言偽議し、農を舍てて游食し、而して言を以て相い高しとす。故に民、上を離れて臣とせざる者、群を成す。これ國を貧しくし兵を弱くするの教えなり。夫れ國、民を庸うに言を以てすれば、則ち民は農に畜えられず。故に惟だ明君のみ言を好むの以て兵を彊くし土を闢くべからざるを知る。惟だ聖人の國を治むるや、壹を作し、これを農に摶むるのみ。
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『商君書』農戦今、世主は皆なその國の危うくして兵の弱きを憂う、而して彊いて說く者を聽く。說く者は伍を成し、言を煩わし辭を飾りて、實用無し。主はその辯を好みて、その實を求めず。說く者は意を得て、道路に曲辯し、輩輩として群を成す。民はその以て王公大人を取るべきを見て、皆なこれを學ぶ。夫れ人、黨與を聚めて國に說議すれば、紛紛焉として小民はこれを樂しみ、大人はこれを說ぶ。
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『商君書』農戦善く國を為むる者は、官法明らかなり、故に知慮に任ぜず。上壹を作す、故に民は偷淫せず、則ち國力は搏まる。國力搏まる者は彊く、國言談を好む者は削らる。故に曰く、農戰の民千人にして、詩書辯慧なる者一人焉に有らば、千人の者は皆な農戰に怠らん。農戰の民百人にして、技藝なる者一人焉に有らば、百人の者は皆な農戰に怠らん。國は農戰を待ちて安く、主は農戰を待ちて尊し。夫れ民の農戰せざるは、上、言を好みて官の常を失えばなり。官を常にすれば則ち國は治まり、務めを壹にすれば則ち國は富む。國富みて治まるは、王の道なり。故に曰く、王道の作るは、身を外にして壹を作すのみ、と。
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『商君書』農戦善く國を為むる者は、その民を教うるや、皆な壹空より官爵を得しむ。是の故に農戰を以てせざれば、則ち官爵無し。國言を去れば則ち民は樸、民樸なれば則ち淫せず。民、上の利の壹空より出づるを見れば、則ち壹を作す、壹を作せば則ち民は偷まず。民偷まず淫せざれば則ち力多く、力多ければ則ち國は彊し。今境內の民、皆な曰く、「農戰は避くべくして、官爵は得べきなり」と。是の故に豪傑は皆な業を變じ、務めて詩書を學び、外權に隨從す。上は以て顯を得べく、下は以て官爵を得べし。要靡は商賈に事え、技藝を為す。皆な以て農戰を避く。具に備わるは、國の危うきなり。民これを以て教えと為す者は、その國必ず削らる。
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『商君書』農戦凡そ人主の民を勸むる所以の者は、官爵なり、國の興る所以の者は、農戰なり。今民の官爵を求むるは、皆な農戰を以てせずして、巧言虛道を以てす。これを勞民と謂う。勞民なる者は、その國必ず力無し。力無き者は、その國必ず削らる。
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『商君書』農戦夫れ農する者寡くして、遊食する者眾し、故にその國は貧しく危うし。今夫れ螟螣蚵蠋は春に生じ秋に死す、一たび出づれば民は數年食に乏し。今一人耕して、百人これを食らう、これその螟螣蚼蠋為ること亦た大なり。詩書有りと雖も、鄉に一束、家に一員あるも、獨り治に益無きなり、これを反すの術に非ざるなり。故に先王はこれを農戰に反す。