新序 / 雜事第一
中行寅將亡,乃召其太祝,而欲加罪焉。曰:「子為我祝,犧牲不肥澤耶?且齋戒不敬耶?使吾國亡,何也祝簡對曰:「昔者吾先君中行穆子皮車十乘,不憂其薄也,憂徳義之不足也。今主君有革車百乘,不憂徳義之薄也,唯患車不足也。夫舟車飾則賦斂厚,賦斂厚則民怨謗詛矣。且君苟以為祝有益於國乎?則詛亦將為損世亡矣,一人祝之,一國詛之,一祝不勝萬詛,國亡不亦宜乎?」祝其何罪中行子乃慚。
新字:中行寅将亡,乃召其太祝,而欲加罪焉。曰:「子為我祝,犠牲不肥沢耶?且斎戒不敬耶?使吾国亡,何也祝簡対曰:「昔者吾先君中行穆子皮車十乗,不憂其薄也,憂徳義之不足也。今主君有革車百乗,不憂徳義之薄也,唯患車不足也。夫舟車飾則賦斂厚,賦斂厚則民怨謗詛矣。且君苟以為祝有益於国乎?則詛亦将為損世亡矣,一人祝之,一国詛之,一祝不勝万詛,国亡不亦宜乎?」祝其何罪中行子乃慚。
書き下し
中行寅將に亡びんとす。乃ち其の太祝を召して罪を加えんと欲す。曰く、子我が爲に祝るに、犧牲肥澤ならざるか。且た齋戒敬まざるか。吾が國をして亡ばしむるは何ぞや、と。祝簡對えて曰く、昔者吾が先君中行穆子は皮車十乘なるも、其の薄きを憂えず、德義の足らざるを憂えたり。今主君は革車百乘有るも、德義の薄きを憂えずして、唯だ車の足らざるを患うるのみ。夫れ舟車飾らるれば則ち賦斂厚く、賦斂厚ければ則ち民怨みて謗詛す。且つ君苟くも以て祝の國に益有りと爲すか。則ち詛も亦た將に損を爲さんとす。世亡びんか。一人之を祝り、一國之を詛う。一祝は萬詛に勝たず。國亡ぶるも亦た宜ならずや。祝に其れ何の罪かあらん、と。中行子乃ち慚ず。
現代語訳
中行寅がまさに滅ぼうとしていた。そこで祭祀を司る太祝を召して罪を着せようとした。言った。「そなたが私のために祈るのに、いけにえが肥えていなかったのか。それとも斎戒が敬虔でなかったのか。わが国を滅ぼそうとしているのは、どういうわけだ」。祝の簡は答えた。「昔、わが先君の中行穆子は皮張りの車が十台しかありませんでしたが、その乏しさを憂えず、徳義の足りないことを憂えました。いま主君は革張りの車を百台お持ちですが、徳義の薄いことを憂えず、ただ車が足りないことだけを心配しておられます。そもそも舟や車を飾れば取り立ては重くなり、取り立てが重ければ民は恨んで謗り呪います。そのうえ君は、祈りが国に益があるとお考えですか。それなら呪いもまた損を与えるでしょう。世は滅びましょう。一人がこれを祈り、国じゅうがこれを呪う。一つの祈りは万の呪いに勝てません。国が滅びるのも当然ではありませんか。祝に何の罪がありましょう」。中行寅はそこで恥じ入った。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
葉隠・聞書第一役儀(やくぎ)を危(あぶ)なきと思うは、すくたれ者なり。外(ほか)の事、私(わたくし)の事にて仕損(しそん)ずるとこそ辱(はじ)にてもあるべし。その事に備(そな)わりたる身なれば、その事にて仕損ずるは定まりたることなり。不調法(ぶちょうほう)にて何と相勤(あいつと)むべきやとの心遣(こころづか)いは、あるべき事なり。
-
論語・衛霊公篇子曰わく、君子はこれを己に求め、小人はこれを人に求む。
-
論語・季氏篇孔子曰く、禄の公室を去ること、五世なり。政の大夫に逮ぶこと、四世なり。故に夫の三桓の子孫、微なり。
-
論語・憲問篇子曰く、「我を知ること莫きかな。」子貢曰く、「何為れぞ其れ子を知ること莫からんや。」子曰く、「天を怨みず、人を尤めず、下学して上達す。我を知る者は、其れ天か。」
-
論語・里仁篇子曰わく、父母在すれば、遠く遊ばず。遊ぶに必ず方有り。
-
尚書・湯誥其れ爾(なんじ)ら万方(ばんぽう)に罪あらば、予(われ)一人に在り。予一人に罪あらば、爾ら万方を以(もっ)てすること無かれ。