戦国策 / 秦二・醫扁鵲見秦武王
醫扁鵲見秦武王,武王示之病,扁鵲請除。左右曰:「君之病,在耳之前,目之下,除之未必已也,將使耳不聰,目不明。」君以告扁鵲。扁鵲怒而投其石:「君與知之者謀之,而與不知者敗之。使此知秦國之政也,則君一舉而亡國矣。」
新字:医扁鵲見秦武王,武王示之病,扁鵲請除。左右曰:「君之病,在耳之前,目之下,除之未必已也,将使耳不聰,目不明。」君以告扁鵲。扁鵲怒而投其石:「君与知之者謀之,而与不知者敗之。使此知秦国之政也,則君一舉而亡国矣。」
書き下し
醫扁鵲秦の武王に見ゆ。武王之に病を示し、扁鵲除かんことを請う。左右曰わく、「君の病は、耳の前、目の下に在り、之を除くも未だ必ずしも已えず、將に耳をして聰ならず、目をして明らかならざらしめんとす。」君以て扁鵲に告ぐ。扁鵲怒りて其の石を投げて曰わく、「君知る者と之を謀りて、知らざる者と之を敗る。此をして秦國の政を知らしめば、則ち君一舉にして國を亡ぼさん。」
現代語訳
医者の扁鵲が秦の武王に謁見した。武王は自分の病を見せ、扁鵲に治療を求めた。扁鵲が治療をしようとすると、側近たちが言った。「君主様のご病気は、耳の前、目の下にございます。これを治療しても必ずしも治るとは限らず、かえって耳を聞こえなくし、目を見えなくしてしまうかもしれません。」武王はこれを扁鵲に告げた。扁鵲は怒って治療用の石の鍼を投げ捨てて言った。「君主は物事を知る者と共に計画を立てながら、物事を知らない者にその計画を台無しにさせている。もしこのような有様で秦国の政治を行わせるならば、君主はただの一度の失敗で国を滅ぼすことになるでしょう。」
解説
名医として知られる扁鵲が秦の武王を診察しようとしたところ、専門知識のない側近たちが根拠のない不安を煽って治療を妨げた場面です。扁鵲は治療そのものよりも、専門家の判断を素人の意見で覆してしまう君主の姿勢そのものに強く怒り、「そのような判断の仕方で国政を行えば、たった一度の誤りで国を滅ぼすことになる」と厳しく諫めています。専門家に任せると決めたら最後までその判断を信頼すべきで、根拠の薄い周囲の声に流されて専門家の仕事を中断させることの危うさを鋭く突いた逸話です。現代の組織運営でも、専門知識を持つ担当者の判断を、知識のない上司や周囲の声で覆してしまうことで、かえって事態を悪化させる場面は少なくなく、誰の意見に重きを置くべきかを見極める重要性を教えてくれます。
この章句が説くこと
扁鵲秦武王専門知識側近人材登用
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