呂氏春秋 / 壅塞④
齊王欲以淳于髡傅太子,髡辭曰:「臣不肖,不足以當此大任也,王不若擇國之長者而使之。」齊王曰:「子無辭也。寡人豈責子之令太子必如寡人也哉?寡人固生而有之也。子為寡人令太子如堯乎?其如舜也?」凡說之行也,道不智聽智,從自非受是也。今自以賢過於堯、舜,彼且胡可以開說哉?說必不入。不聞存君。
新字:斉王欲以淳于髡傅太子,髡辞曰:「臣不肖,不足以当此大任也,王不若択国之長者而使之。」斉王曰:「子無辞也。寡人豈責子之令太子必如寡人也哉?寡人固生而有之也。子為寡人令太子如堯乎?其如舜也?」凡説之行也,道不智聴智,従自非受是也。今自以賢過於堯、舜,彼且胡可以開説哉?説必不入。不聞存君。
書き下し
齊王、淳于髡を以て太子に傅とせんと欲す。髡辭して曰く、「臣不肖なり、以て此の大任に當るに足らざるなり。王、國の長者を擇びて之を使うに若かず。」齊王曰く、「子、辭すること無かれ。寡人豈に子の太子をして必ず寡人の如くならしむることを責めんや。寡人は固より生まれながらにして之を有するなり。子、寡人の為に太子をして堯の如くならしめんか、其れ舜の如くならしめんか。」凡そ說の行わるるや、不智道り智に聽き、非從り是に受くるなり。今自ら賢なること堯・舜に過ぎたりと以わば、彼且た胡ぞ以て開說す可けんや。說必ず入らずして、存君聞かず。
現代語訳
斉王は淳于髡を太子の傅すなわち教育係にしようとした。髡は辞退して言った。「私は愚か者で、この大任に当たるには不足です。王は国の年長の賢者を選んでお使いになるほうがよいでしょう。」斉王は言った。「あなたは辞退しないでほしい。私はあなたに太子を必ず私のようにさせよと求めているわけではない。私のような資質はもともと生まれつき備わっているものだ。あなたは私のために太子を堯のようにしてくれるか、それとも舜のようにしてくれるか。」およそ説得が受け入れられるのは、相手が智でないところから智に聞き従い、非であるところから是を受け入れるからだ。今、自ら賢明さが堯・舜を超えると思い込んでいれば、どうして説得を切り開くことができようか。説得は必ず受け入れられず、そうなれば君主を保つための進言も聞かれない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
葉隠・聞書第一何某(なにがし)は気性者(きしょうもの)なり、何某の前にてかような儀を申し候(そうろう)」と話す人あり。それが面(つら)に似合わぬ言い分なり。曲者(くせもの)と言われたきまでなり。卑(いや)しき位なり。青き所がある人と見えたり。そのように、人の前にて物を言うは槍持(やりもち)中間(ちゅうげん)の出会い同然にて賤(いや)しき事なり。「侍たる者は、まず礼儀正しきとこそ美しけれ」と。扇・鼻紙・料紙・臥具(がぐ)などは、少しよき物にても苦しからざるなり。居宅・衣裳・諸道具など面(つら)に似合わぬ事する人多し。
-
葉隠・聞書第一少し理窟(りくつ)などを合点(がてん)したる時は、頓(やが)て高慢(こうまん)して、我今の世間に合はぬ生附(うまれつき)などと云ひて、我が上(うえ)あらじと思ふは、天罰あるべきなり。何様(いかよう)の能事(のうじ)持ちたりとも、人の好かぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事には好きて、随分(ずいぶん)へりくだり、朋輩(ほうばい)の下に居るを悦ぶ心入(こころいれ)の者は、諸人(しょにん)嫌はぬものなり。「さてさて振(ふ)りある秘蔵(ひぞう)の者共(ものども)。」
-
老子・第8章上善は水の若し。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所に処る。故に道に幾し。居は地を善しとし、心は淵を善しとし、与は仁を善しとし、言は信を善しとし、正は治を善しとし、事は能を善しとし、動は時を善しとす。夫れ唯だ争わず、故に尤め無し。
-
史記 老子韓非列伝老子は、楚の苦県厲郷曲仁里の人なり。姓は李氏、名は耳、字は耼、周の守藏室の史なり。孔子、周に適き、将に礼を老子に問はんとす。老子曰く、「子の言ふ所の者は、其の人と骨と皆已に朽つ。独り其の言在るのみ。且つ君子は其の時を得ば則ち駕し、其の時を得ざれば則ち蓬累して行く。吾之を聞く、良賈は深く藏して虚しきが若く、君子は盛徳あるも容貌は愚なるが若し、と。子の驕気と多欲、態色と淫志を去れ。是れ皆子の身に益無し。吾が以て子に告ぐる所は、是くの若きのみ」と。孔子去り、弟子に謂ひて曰く、「鳥は、吾其の能く飛ぶを知る。魚は、吾其の能く游ぐを知る。獣は、吾其の能く走るを知る。走る者には以て罔を為す可く、游ぐ者には以て綸を為す可く、飛ぶ者には以て矰を為す可し。龍に至りては、吾其の風雲に乗りて天に上るを知る能はず。吾今日老子を見るに、其れ猶ほ龍のごときか」と。
-
史記 管晏列伝晏子斉の相たり。出づ。其の御の妻、門間よりして其の夫を闚ふ。其の夫、相の御を為して、大蓋を擁し、駟馬に策ち、意気揚揚として甚だ自ら得たるなり。既にして帰る。其の妻去らんことを請ふ。夫其の故を問ふ。妻曰く、「晏子の長けは六尺に満たずして、身は斉国に相たり、名は諸侯に顕はる。今妾其の出づるを覩るに、志念深く、常に自ら下る有る者なり。今子は長け八尺、乃ち人の僕御為り、然るに子の意は自ら以て足れりと為す。妾是の以に去らんことを求むるなり」と。其の後夫自ら抑損す。晏子怪しみて之を問ふ。御実を以て対ふ。晏子薦めて大夫と為す。
-
尚書・仲虺之誥自ら師を得る者は王たり、人(ひと)己(おのれ)に若(し)く莫(な)しと謂(い)う者は亡ぶ。