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呂氏春秋 / 求人③

昔者堯朝許由於沛澤之中,曰:「十日出而焦火不息,不亦勞乎?夫子為天子,而天下已治矣,請屬天下於夫子。」許由辭曰:「為天下之不治與?而既已治矣。自為與?啁焦巢於林,不過一枝;偃鼠飲於河,不過滿腹。歸已君乎!惡用天下?」遂之箕山之下,潁水之陽,耕而食,終身無經天下之色。故賢主之於賢者也,物莫之妨;戚愛習故,不以害之;故賢者聚焉。賢者所聚,天地不壞,鬼神不害,人事不謀,此五常之本事也。

新字:昔者堯朝許由於沛沢之中,曰:「十日出而焦火不息,不亦労乎?夫子為天子,而天下已治矣,請属天下於夫子。」許由辞曰:「為天下之不治与?而既已治矣。自為与?啁焦巣於林,不過一枝;偃鼠飲於河,不過満腹。歸已君乎!悪用天下?」遂之箕山之下,潁水之陽,耕而食,終身無経天下之色。故賢主之於賢者也,物莫之妨;戚愛習故,不以害之;故賢者聚焉。賢者所聚,天地不壊,鬼神不害,人事不謀,此五常之本事也。

書き下し

昔者、堯、許由に沛澤の中に朝して曰く、「十日出でて、焦火息まず、亦た勞ならずや。夫子、天子と為らば、天下已て治まる。請う、天下を夫子に屬せん。」許由辭して曰く、「天下の治まらざるが為か、而れども既已に治めたり。自ら為にするか。啁焦は林に巢くうも、一枝に過ぎず。偃鼠、河に飲むも、腹を滿たすに過ぎず。歸り已めよ君や、惡くんぞ天下を用いん。」遂に箕山の下、潁水の陽に之き、耕して食らい、終身天下を經するの色無し。故に賢主の賢者に於けるや、物、之を妨ぐる莫く、戚愛習故、以て之を害せず。故に賢者聚まる。賢者の聚まる所、天地も壞らず、鬼神も害せず、人事も謀らず。此れ五常の本事なり。

現代語訳

昔、堯が沛沢のなかに許由を訪ねて言った。「十個の太陽が出てかがり火が消えないようなものだ。無駄骨ではありませんか。あなたが天子となれば天下は治まります。どうか天下をあなたに委ねたい。」許由は辞退して言った。「天下が治まらないからですか。しかしもう治まっています。自分のためですか。小鳥は林に巣を作っても一枝で足り、もぐらは河の水を飲んでも腹いっぱいで足ります。お帰りなさい、あなた。私に天下など何の用がありましょう。」そして箕山のふもと、潁水の北へ行き、耕して食べ、生涯天下を治めようという気配も見せなかった。だから賢明な君主が賢者に対しては、何ものもこれを妨げず、身内や近臣もこれを害さない。だから賢者が集まる。賢者が集まるところでは、天地も壊れず、鬼神も害さず、人事も乱れない。これが五常の根本の事業である。

解説

堯が隠者の許由に天下を譲ろうとして断られた有名な故事を引く一段です。堯は「あなたがいるのに私が位にあるのは無駄だ」と天下を委ねようとしますが、許由は小鳥が一枝、もぐらが満腹で足りるように、自分には天下など不要だと辞退し、箕山に隠れて耕作の暮らしに徹しました。呂氏春秋はこれを受け、賢主が賢者を大切にして誰にも妨げさせなければ賢者が集まり、そこでは天地も鬼神も人事も乱れないと説きます。無欲な賢者を敬い、その活躍を阻む障害を取り除くことが人材を集める要だという教えです。地位や利欲に動じない人物への敬意と、優れた人が力を発揮できる環境づくりの大切さは、有能な人材をどう遇し引き留めるかを問う現代の組織にも通じます。

この章句が説くこと

求人許由箕山賢者五常

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