呂氏春秋 / 壹行⑥
夫天下之所以惡,莫惡於不可知也。夫不可知,盜不與期,賊不與謀。盜賊大姦也,而猶所得匹偶,又況於欲成大功乎?夫欲成大功,令天下皆輕勸而助之,必之士可知。
新字:夫天下之所以悪,莫悪於不可知也。夫不可知,盗不与期,賊不与謀。盗賊大姦也,而猶所得匹偶,又況於欲成大功乎?夫欲成大功,令天下皆軽勧而助之,必之士可知。
書き下し
夫れ天下の惡む所以は、知る可からざるよりも惡むは莫し。夫れ知る可からざれば、盜も與に期せず、賊も與に謀らず。盜賊は大姦なり、而れども猶ほ匹偶する所を得。又況んや大功を成さんと欲するものに於いてをや。夫れ大功を成さんと欲するもの、天下をして皆輕い勸めて之を助けしむれば、必ず之の士知る可し。
現代語訳
そもそも天下の人が憎むもので、人柄が知れないことほど憎むものはない。人柄が知れなければ、盗人でさえ仲間として約束を交わさず、賊でさえ一緒に事を謀らない。盗賊は大悪人であるが、それでもなお仲間を得るものである。まして大きな功業を成そうとする者においてはなおさらである。大きな功業を成そうとして、天下の人々に皆競って励まし助けてもらおうとするなら、その士は必ず人柄の知れる信頼できる者でなければならない。
解説
この篇「壹行」を締めくくる一段で、人柄が知れないこと、つまり信頼できないことこそ天下が最も憎むものだと重ねて説きます。盗賊のような大悪人でさえ、信頼できない者とは仲間になろうとせず、約束も共謀もしないと述べ、まして大きな功業を志す者なら、なおのこと人柄の知れた信頼できる人物でなければ天下の助けは得られないと論じます。戦国期に大事を成すには広く人心を集める必要があり、その土台が信頼だという主張です。悪事の世界にすら信義が要るという逆説的な例は、いかなる協力関係も相手の予測可能性と誠実さの上に成り立つことを鮮やかに示します。大きな志を実現するほど、裏表のない一貫した人格が不可欠だという教えは、現代のリーダーにも通じます。
この章句が説くこと
壱行知る可からず盗賊信頼大功人心
関連する章句
-
李衛公問対・卷中蕭王、赤心を人の腹中に推す。
-
史記 高祖本紀且つ吾の軍を霸上に還す所以は、諸侯の至るを待ちて約束を定めんのみ。」と。乃ち人をして秦の吏と県郷邑を行かしめ、之に告諭す。秦人大いに喜び、争ひて牛羊酒食を持ちて軍士に献饗す。沛公又譲りて受けず、曰く、「倉粟多し、乏しきに非ず、人に費さしむるを欲せず。」と。人又益々喜び、唯だ沛公の秦王と為らざらんことを恐る。
-
『武家家訓集』黒田如水教諭「神の罰より主君の罰、主君の罰より臣下の罰」一神の罰より主君の罰おそるべし、主君の罰より臣下百姓の罰恐るべし、其故は神の罰は祈もまぬかるべし、主君の罰は諂言して謝すべし、只臣下百姓にうとまれては必國家を失ふ故祈も諂言しても其罰はまぬかれがたし、故に神の罰主君の罰よりも臣下萬民の罰は尤おそるべし、
-
『晏子春秋』外篇上・景公坐路寢曰誰將有此晏子諫景公路寝に坐して、曰く、「美なるかな室、其れ誰か将に此を有たんとするか」と。晏子対えて曰く、「其れ田氏か。田無宇は垾を為せり」と。公曰く、「然らば則ち奈何」と。晏子対えて曰く、「善を為す者は、君上の勧むる所なり。豈に禁ず可けんや。夫れ田氏は、国門に柝を撃つの家にして、父は以て其の子に托し、兄は以て其の弟に托し、今に於て三世なり。山の木は市の如くにして、山に加えず。魚塩蚌蜃は、海に加えず。民財之が為に帰す。今歳凶饑にして、蒿種芼斂は半ばならず、道路に死人有り。斉の旧四量は、四升を豆と為し、豆四にして区、区四にして釜、釜十にして鐘なり。田氏の四量は、各々一を加う。家の量を以て貸し、公の量を以て収む。則ち糴する所以、百姓の死命を澤うこと多し。今公家は驕汰にして、田氏は慈恵なり。国の澤は是に焉くにか帰せん。田氏は徳無しと雖も、民に施す有り。公厚く斂め、田氏は厚く施す。詩に曰く、『汝に与うる徳無しと雖も、式て歌い且つ舞う』と。田氏の施しは、民之を歌舞するなり。国の帰するも、亦た宜ならずや」と。
-
論語・子張篇孟氏、陽膚をして士師たらしむ。曾子に問う。曾子曰く、「上其の道を失いて、民散ずること久し。如し其の情を得ば、則ち哀矜して喜ぶこと勿かれ。」
-
言志四録・言志晩録 別存 第四十一条 言に服して心に服せず公曰く、一事を区処するには、人をして感戴する所有り、倚頼する所有らしむるを要す。然らずんば、人は言に服して、心に服せず。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る