呂氏春秋 / 壹行②
強大未必王也,而王必強大。王者之所藉以成也何?藉其威與其利。非強大則其威不威,其利不利。其威不威則不足以禁也,其利不利則不足以勸也,故賢主必使其威利無敵,故以禁則必止,以勸則必為。威利敵,而憂苦民、行可知者王;威利無敵,而以行不知者亡。小弱而不可知,則強大疑之矣。人之情不能愛其所疑,小弱而大不愛則無以存。故不可知之道,王者行之廢,強大行之危,小弱行之滅。
新字:強大未必王也,而王必強大。王者之所藉以成也何?藉其威与其利。非強大則其威不威,其利不利。其威不威則不足以禁也,其利不利則不足以勧也,故賢主必使其威利無敵,故以禁則必止,以勧則必為。威利敵,而憂苦民、行可知者王;威利無敵,而以行不知者亡。小弱而不可知,則強大疑之矣。人之情不能愛其所疑,小弱而大不愛則無以存。故不可知之道,王者行之廃,強大行之危,小弱行之滅。
書き下し
強大なるもの未だ必ずしも王ならず、而して王は必ず強大なり。王者の藉りて以て成す所は何ぞや。其の威と其の利とに籍る。強大に非ざれば則ち其の威は威ならず、其の利は利ならず。其の威、威ならざれば、則ち以て禁ずるに足らず、其の利、利ならざれば、則ち以て勸むるに足らざるなり。故に賢主は必ず其の威利をして敵するもの無からしむ。故に以て禁ずれば則ち必ず止み、以て勸むれば則ち必ず為す。威利敵するものありて、民を憂苦せしむるも、知る可きを行う者は王たり。威利敵するもの無きも、以て知る可からざるを行う者は亡ぶ。小弱にして知る可からざるを行えば、則ち強大之を疑う。人の情、其の疑う所を愛する能わず。小弱にして大、愛せざれば、則ち以て存する無し。故に知る可からざるの道は、王者之を行えば廢れ、強大之を行えば危うく、小弱之を行えば滅ぶ。
現代語訳
強大であっても必ずしも王者となれるわけではないが、王者は必ず強大である。王者が頼って事を成すものは何か。その威と利である。強大でなければ威は威として働かず、利も利として働かない。威が威でなければ人を禁じるに足らず、利が利でなければ人を励ますに足らない。だから賢明な君主は、必ずその威と利を敵うものがないほど強くする。そうすれば禁じれば必ずやみ、励ませば必ず行う。たとえ威と利に匹敵する相手がいて民を苦しめることがあっても、人柄が知れる誠実な行いをする者は王者となる。威と利に敵うものがなくても、人柄の知れない行いをする者は滅びる。小さく弱い国が人柄の知れない行いをすれば、強大な国はこれを疑う。人の情として、疑わしいものを愛することはできない。小弱の国が大国に愛されなければ、存立するすべがない。だから人柄の知れない生き方は、王者が行えば衰え、強大な国が行えば危うくなり、小弱の国が行えば滅びるのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『弁名』元亨利貞利に数義有り。「君子は義に喩り、小人は利に喩る」と曰ひ、「利に放りて行ふ」と曰ひ、「利を見て義を思ふ」と曰ふが如き、皆生を営みて得る所有るを謂ふ。是れ財利の利なり。「用を利し生を厚くす」と曰ひ、「利器」と曰ふが如き、皆善く其の器を治め、之を用ふるに軽便ならしむるを謂ふ。用も亦た器なり。是れ鋭利の利なり。易に「往く攸有るに利し」「大川を渉るに利し」と曰ふが如き、皆其の事を作して成功有るを謂ふ。是れ吉利の利なり。「物を利す」「天下を利す」の如きは、其れをして益を得て沢を被らしむるを謂ふ。是れ利益の利なり。
-
『慎思録』巻之四梁の蕭允曰く、禍の来たる所は、皆利より生ず。苟も利を求めずんば、禍何よりか生ぜん、と。愚謂へらく、世人の禍に逢ふや、不幸にして至る者は極めて少なし。往往にして利を求むるに因りて禍を得る者多し。夫れ利を求むる者は、己を利せんと欲して却つて害に逢ふ。其の倚伏必然なり。畏れざるべけんや。蓋し利を求むる者は必ず人を害す。人を害せずして己を利するは、未だ之有らざるなり。然らば則ち其の報い豈に災禍無かるべけんや。故に曰く、利は害の本なり、と。名を求むる者も亦た然り。名を求めて反つて名を喪ふ者多し。
-
『呻吟語』外篇・人情・禍は不意の中に防ぐ利は餘り無き處に算へ、禍は不意の中に防ぐ。
-
『弁名』元亨利貞故に易の亨・利は、其の義相似たり。亨は其の道の行はるるを主として之を言ひ、利は其の事を行ひて成功有るを主として之を言ふ。是れ其の異なるのみ。仮如へば聘享を以て之を言へば、則ち此に藉りて諸侯和順し、国其の福を被る、是れ利なり。故に経文は利を受くる者を主として之を言ふ。而して文言の「物を利す」と曰ふに至りては、則ち利を施す者を主として之を言ふ。物を利すとは、万物を利益す、是れ仁なり。必ず義を以て之を済して、而る後に物得て利益すべし。故に「物を利して以て義を和するに足る」と曰ふ。和とは五味相和するの和の如し。異を以て同を済すを謂ふなり。仁は大なり。苟も義以て之を差別するに非ずんば、則ち仁成すべからず。是れ文言は皆君子の道を以て易を解するのみ。
-
『呻吟語』内篇・存心・大利も小義に換へず大利も小義に換へず、況んや小利を以て大義を壞るをや。貪る者は以て戒む可し。
-
『韓非子』詭使第四十五聖人の治道を為す所以の者は三つ。一に曰く「利」、二に曰く「威」、三に曰く「名」。夫れ利なる者は、民を得る所以なり。威なる者は、令を行ふ所以なり。名なる者は、上下の同じく道とする所なり。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る