呂氏春秋 / 恃君①
凡人之性,爪牙不足以自守衛,肌膚不足以扞寒暑,筋骨不足以從利辟害,勇敢不足以卻猛禁悍,然且猶裁萬物,制禽獸,服狡蟲,寒暑燥溼弗能害,不唯先有其備,而以群聚邪。群之可聚也,相與利之也。利之出於群也,君道立也。故君道立則利出於群,而人備可完矣。
新字:凡人之性,爪牙不足以自守衛,肌膚不足以扞寒暑,筋骨不足以従利辟害,勇敢不足以卻猛禁悍,然且猶裁万物,制禽獣,服狡虫,寒暑燥溼弗能害,不唯先有其備,而以群聚邪。群之可聚也,相与利之也。利之出於群也,君道立也。故君道立則利出於群,而人備可完矣。
書き下し
凡そ人の性、爪牙は以て自ら守衛するに足らず、肌膚は以て寒暑を扞ぐに足らず、筋骨は以て利に從い害を辟くるに足らず、勇敢は以て猛を卻け悍を禁ずるに足らず。然れども且つ猶ほ萬物を裁し、禽獸を制し、狡蟲を服し、寒暑燥溼も害すること能わざるは、唯だに先づ其の備有るのみならずして、而も羣を以て聚まるがためか。羣の聚まる可きは、相與に之を利とすればなり。利の羣より出づるは、君道立てばなり。故に君道立てば則ち利羣より出でて、人の備完かる可し。
現代語訳
おおよそ人間の性質は、爪や牙は自分の身を守るに足らず、皮膚は寒暑を防ぐに足らず、筋骨は利に赴き害を避けるに足らず、勇気は猛獣を退け凶暴を抑えるに足りない。それでもなお万物を裁き、鳥獣を制し、害虫を服従させ、寒暑や乾湿にも害されないのは、ただあらかじめ備えがあるだけでなく、群れをなして集まっているからである。群れが集まりうるのは、互いにそれを利とするからだ。利が群れから生じるのは、君主の道が確立しているからである。ゆえに君道が立てば利は群れから生まれ、人の備えは完全になる。
解説
この段は「なぜ人間には君主が必要か」を人間の弱さから説き起こします。個体としては非力な人間が自然界を支配できるのは、集団を組むからだという洞察が要点です。背景には戦国末期、統一へ向かう時代に君主の存在意義を根拠づけようとする問題意識があります。集団は互いの利益によって成り立ち、その利益を引き出す秩序こそ君道だと説く点は、組織やリーダーシップの原理として今も通じます。人が集まる理由を利益と秩序に求める視点は、現代のチーム運営を考える手がかりになります。
この章句が説くこと
恃君君道群人の性集団利
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