呂氏春秋 / 不屈④
白圭新與惠子相見也,惠子說之以彊,白圭無以應。惠子出。白圭告人曰:「人有新取婦者,婦至,宜安矜煙視媚行。豎子操蕉火而鉅,新婦曰:『蕉火大鉅。』入於門,門中有歛陷,新婦曰:『塞之,將傷人之足。』此非不便之家氏也,然而有大甚者。今惠子之遇我尚新,其說我有大甚者。」惠子聞之曰:「不然。《詩》曰:『愷悌君子,民之父母』。愷者,大也;悌者,長也。君子之德,長且大者,則為民父母。父母之教子也,豈待久哉?何事比我於新婦乎?詩豈曰『愷悌新婦』哉?」誹汙因汙,誹辟因辟,是誹者與所非同也。白圭曰「惠子之遇我尚新,其說我有大甚者」,惠子聞而誹之,因自以為為之父母,其非有甚於白圭亦有大甚者。
新字:白圭新与恵子相見也,恵子説之以彊,白圭無以応。恵子出。白圭告人曰:「人有新取婦者,婦至,宜安矜煙視媚行。豎子操蕉火而鉅,新婦曰:『蕉火大鉅。』入於門,門中有歛陥,新婦曰:『塞之,将傷人之足。』此非不便之家氏也,然而有大甚者。今恵子之遇我尚新,其説我有大甚者。」恵子聞之曰:「不然。《詩》曰:『愷悌君子,民之父母』。愷者,大也;悌者,長也。君子之徳,長且大者,則為民父母。父母之教子也,豈待久哉?何事比我於新婦乎?詩豈曰『愷悌新婦』哉?」誹汙因汙,誹辟因辟,是誹者与所非同也。白圭曰「恵子之遇我尚新,其説我有大甚者」,恵子聞而誹之,因自以為為之父母,其非有甚於白圭亦有大甚者。
書き下し
白圭新たに惠子と相見ゆるや、惠子之に說くに彊を以てす。白圭以て應うること無し。惠子出づ。白圭人に告げて曰く、「人新たに婦を取る者有り。婦至れば、宜しく安矜・煙視・媚行すべし。豎子、蕉火を操りて鉅いなる。新婦曰く、『蕉火大だ鉅いなり。』門に入るに、門中に歛陷有り。新婦曰く、『之を塞げ、將に人の足を傷つけんとす。』此れ不便の家氏には非ざるなり。然れども大甚なる者有り。今惠子の我に遇うは尚ほ新たなるに、其の我に說くこと大甚なる者有り。」惠子之を聞きて曰く、「然らず。詩に曰く、『愷悌の君子は、民の父母。』愷は大なり。悌は長なり。君子の德、長にして且つ大なれば、則ち民の父母爲り。父母の子を教うるや、豈に久しきを待たんや。何事か我を新婦に比するや。詩に、豈に愷悌の新婦と曰んや。汙を誹るに汙に因り、辟を誹るに辟に因る。是の誹る者は非とする所と同じきなり。」白圭曰く、「惠子の我に遇うは尚ほ新たなるに、其の我に說くこと大甚なる者有り。」惠子聞きて之を誹り、因りて自ら之が父母爲りと以爲えるは、其れ白圭より甚だしきこと有るに非ずや。亦た大甚なる者有り。
現代語訳
白圭が初めて恵子と会ったとき、恵子は彼に富国強兵を説いた。白圭は応じなかった。恵子が退出すると、白圭は人に語った、「ある人が新しく妻を迎えた。花嫁が到着したら、ゆったりと慎み深く、控えめに見て、しずしずと歩くのがよい。ところが召使いが松明を持って大きく燃やすと、花嫁は『松明が大きすぎる』と言い、門を入ると門の中に窪みがあり、花嫁は『塞ぎなさい、人の足を傷つける』と言った。これは家のために気を利かせていないわけではないが、出過ぎている。今、恵子が私と会ったのはまだ日が浅いのに、私への説き方は出過ぎている。」恵子はこれを聞いて言った、「そうではない。詩に『和らぎ慎む君子は民の父母』とある。愷は大、悌は長。君子の徳が長く大きければ民の父母となる。父母が子を教えるのに、どうして時間がかかろうか。どうして私を新婦になぞらえるのか。詩に、どうして愷悌の新婦などと言おうか。汚れをそしるのに汚れによってし、偏りをそしるのに偏りによってする。このそしる者は、そしられる相手と同類である。」白圭は「恵子と会ったのはまだ日が浅いのに、私への説き方は出過ぎている」と言った。恵子はそれを聞いてそしり返し、自分は民の父母だと思い込んだが、それは白圭よりも甚だしいことではないか。これもまた出過ぎている。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
呂氏春秋・知分⑤白圭問於鄒公子夏后啟曰:「踐繩之節,四上之志,三晉之事,此天下之豪英。以處於晉,而迭聞晉事。未嘗聞踐繩之節、四上之志,願得而聞之。」夏后啟曰:「鄙人也,焉足以問?」白圭曰:「願公子之毋讓也。」夏后啟曰:「以為可為,故為之;為之,天下弗能禁矣。以為不可為,故釋之;釋之,天下弗能使矣。」白圭曰:「利弗能使乎?威弗能禁乎?」夏后啟曰:「生不足以使之,則利曷足以使之矣?死不足以禁之,則害曷足以禁之矣?」白圭無以應。夏后啟辭而出。凡使賢不肖異:使不肖以賞罰,使賢以義。故賢主之使其下也必義,審賞罰,然後賢不肖盡為用矣。
-
呂氏春秋・應言①──白圭謂魏王曰:「市丘之鼎以烹雞,多洎之則淡而不可食,少洎之則焦而不熟,然而視之蝺焉美無所可用。惠子之言,有似於此。」惠子聞之曰:「不然。使三軍饑而居鼎旁,適為之甑,則莫宜之此鼎矣。」白圭聞之曰:「無所可用者,意者徒加其甑邪?」白圭之論自悖,其少魏王太甚。以惠子之言蝺焉美無所可用,是魏王以言無所可用者為仲父也,是以言無所用者為美也。
-
呂氏春秋・應言②白圭謂魏王曰:「市丘之鼎以烹雞,多洎之則淡而不可食,少洎之則焦而不熟,然而視之蝺焉美無所可用。惠子之言,有似於此。」惠子聞之曰:「不然。使三軍饑而居鼎旁,適為之甑,則莫宜之此鼎矣。」白圭聞之曰:「無所可用者,意者徒加其甑邪?」白圭之論自悖,其少魏王太甚。以惠子之言蝺焉美無所可用,是魏王以言無所可用者為仲父也,是以言無所用者為美也。
-
史記 貨殖列伝白圭、時変を楽観す、故に人棄つれば我取り、人取れば我与ふ。能く飲食を薄くし、嗜欲を忍び、衣服を節し、用事の僮仆と苦楽を同じくし、時に趨ること猛獣摯鳥の発するがごとし。故に曰く、吾生産を治むるは、猶ほ伊尹・呂尚の謀、孫吳の兵を用ゐ、商鞅の法を行ふがごときなり。是の故に其の智権変に与るに足らず、勇以て決断するに足らず、仁以て取予する能はず、彊以て守る所有る能はざれば、吾が術を学ばんと欲すと雖も、終に之に告げざるなりと。蓋し天下治生を言ふ者は白圭を祖とす。
-
呂氏春秋・先識⑤周鼎著饕餮,有首無身,食人未咽,害及其身,以言報更也。為不善亦然。白圭之中山,中山之王欲留之,白圭固辭,乘輿而去;又之齊,齊王欲留之仕,又辭而去。人問其故。曰:“之二國者皆將亡。所學有五盡。何謂五盡?曰:莫之必則信盡矣,莫之譽則名盡矣,莫之愛則親盡矣,行者無糧、居者無食則財盡矣,不能用人、又不能自用則功盡矣。國有此五者,無幸必亡。中山、齊皆當此。”若使中山之王與齊王,聞五盡而更之,則必不亡矣。其患不聞,雖聞之又不信。然則人主之務,在乎善聽而已矣。夫五割而與趙,悉起而距軍乎濟上,未有益也。是棄其所以存,而造其所以亡也。
-
論語 公冶長篇南容三復白圭。孔子以其兄之子妻之。